弁護士が解説! いじめ「学校調査」ガイドブック
18面記事
國本 大貴 著
重大事態への対処 事例基に詳述
いじめ重大事態が増加している。学校の対応が課題となるケースも多く、その一因として法の規定に沿った適切な対応が十分に実施されていない点が挙げられる。
本書は、いじめ重大事態における「学校調査」について、弁護士が解説した実践的な一冊である。まず、いじめ問題に関する学校の責任と義務を整理し、重大事態発生時の初期対応から調査の開始、資料収集やヒアリングの進め方、報告書の作成、調査結果の説明、さらにその後の対応までを具体的な事例に基づいて詳述している。
また、重大事態ガイドラインの内容にも触れつつ、調査の目的を整理する。重大事態調査は単なる事実認定ではなく、事態への適切な対処と類似ケースの再発防止を目的とする。しかし、この点が保護者を含め十分に理解されていないことが課題として示される。特に、事実認定と評価の切り分け方、「法的評価」の概念、司法面接の技法などは、教育現場において実践的な示唆を与える。
一方で、現行法規には学者から問題点も指摘されている。例えば、いじめには双方向性があるにもかかわらず、重大事態を先に訴えた者勝ちの状況が生じ、解決を困難にしている。このため弁護士などの支援は不可欠である。学校現場においても、重大事態への適切な対応を図るために、職員室に備えておきたい一冊である。
(3630円 学事出版)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)