「教育の政治的中立」の政治過程 教育二法成立史を再考する
13面記事
藤田 祐介 著
関係者の力学総合的に描出
本書は、教育二法(「教育公務員特例法」の一部改正と、「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」)の制定過程を整理したものである。教育二法については、既に一定の関心の下で研究が蓄積されているが、本書は従来の研究よりも幅広い関係者を対象に、分厚い史料の分析を展開し、関係者の力学を総合的に描き出したほか、どのような調整の下で立法が成立していったのかを丁寧に捉え、従来の解釈を更新する研究上の貢献を果たしている。
公教育の現場において「政治」への関心をいかに高めるかは、現代でも重要な課題ではあるが、一方でそれをいかに「中立」に進めるかも、常に難題であった。ルールの整備が必要なのか、その中ではどのようなルールが適切なのか、それとも専門職としての見識や自戒を信頼するべきなのか。本書による幅広い検証作業の過程では、さまざまな立場の関係者による「政治的中立」の考え方が示される。もちろん戦後教育史の重要な研究成果として正対する価値のある本書であるが、そうしたさまざまな関係者の考え方に接し、対話を試みることは、われわれが「公教育における政治的中立」についての考えを深めることにもつながる。
過去を取り扱った歴史研究としての読みだけでなく、現代的な課題や関心に引き付けた読み方についても、ぜひお勧めしたい。
(8250円 ミネルヴァ書房)
(川上 泰彦・兵庫教育大学教授)

