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校長塾 経営力を高める最重要ポイント【第536回】

4面記事

管理職・学校経営

津田 秀司 元広島県公立小学校校長
学校の宝見つけ、誇り持たせる
運動場の広さ生かし学校農園運営

 さまざまな小学校を見て思うのは、どの学校も、国語科や算数科の研究には熱心だが、「学校への誇りを持たせる教育」ができている所はあまりない。
 赴任して、児童に学校の良いところを尋ねた。児童は、「別にないけれど、運動場が広いこと、元気なこと」と答えた。PTA役員に同じ質問をした。「運動場が広いことかな。児童も元気だし。でも、取りえがないよね」
 確かに運動場は広いが雑草が生えている。そこで、このくらいの長所しかないのなら、それを徹底的に宝にしようと考えた。できれば新たな負担を生まない形で、雑草も除去したい。
 思い付いたのは、運動場を地域住民に農園として貸し出すことだった。農園であれば自主的に雑草を取り除くことだろう。
 最初に首長に相談を持ち掛けると、その場で快諾。しかし、地教委は「前代未聞。許可できない」とつれない。ならば、「学校農園としての使用ではどうか」と問うと「学校主体ならOK」と返ってきた。
 「どうせやるなら、さらに楽しめるものに」と、農園で取れた作物を生かして「学校喫茶店」を開くことにした。農園の広さはプールの半分程度で、栽培はダイコンに決めた。児童と地域の方が協力して育て、喫茶店のメニューは漬物にした。飲み物は教え子の会社に連絡して、ショウガ湯を提供してもらうことに。店員は児童のボランティアが務め、ポップメニューも手作りした。何より驚いたのは児童の言葉遣い。特に指導をしたわけではないのに店員らしい接遇をする。喫茶店には保護者や地域住民など50人以上が参加してくれた。
 「学校喫茶店」の2回目は、ジャガイモを栽培し、カレー料理を提供した。ある地域住民は、カレーを食べた瞬間、「こんなに甘いのは初めてだ。甘過ぎる。でも、こんなおいしいカレーは食べたことがない。地域の者と保護者、児童で食べるのに感動した。最幸の学校だ」と口にした。
 私が転勤後、その方が中心になって畑作りをしてくれることになった。畑作りは、目には見えない人と人とのつながりも育てることになった。
 今日のように多様な考えを持つ職員、多様な価値観を持つ保護者が増えている学校においては、全てを一点に集中させることが必要であろう。それには学校の実態に即した明確なビジョンを校長が示し、推し進めることだ。ここから自校への誇りが生まれる仕掛けをつくりたい。
 単に広い運動場と元気な児童がいる学校ではなく、地域と深くつながった、誇れる学校農園のある学校となったように。

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