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支援が困難な事例に向き合う 発達臨床

14面記事

書評

教育・保育・心理・福祉・医療の現場から
別府 悦子・香野 毅 編著
問題行動を発達要求と捉え

 文部科学省が実施した2回の全国悉皆調査によれば、発達障害などがあって特別な教育的ニーズを持つ子どもが、通常の小・中学校に6%強もいることが分かっている。近年、新自由主義的な社会経済政策が推し進められ、子育ての環境がさまざまな面で厳しさを増している。そうした状況の下で、適切で迅速な支援の手を差し伸べることが、極めて重要な教育的な課題となっている。
 本書は、そうした支援の在り方について、支援が困難である事例に向き合った専門家たちの視点から論じたものである。支援が行われた現場は、学校教育・学童保育・障害者福祉施設・巡回相談・医療など、広範囲に及んでいる。支援の対象は、自閉スペクトラム症児・者、重症心身障害児、強度行動障害者などであり、当事者が示す問題行動は複雑かつ重度である。支援者に共通していることは、問題行動で最も困っているのは当事者本人であると考え、問題行動を発達要求として捉えるという態度である。そのような姿勢で支援者が当事者に向き合うことによって、困難な問題行動の中に発達の契機となる当事者の「別の顔」を見いだすことができる。
 このような支援は、優れた一人の専門家によってなされるものではない。互いを尊敬し、同じ方向を目指して強く結び付いた専門家たちがいて、初めて成り立つものなのである。
(2592円 ミネルヴァ書房)
(都筑 学・中央大学教授)

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