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高校普通科を再編、学科新設 文・理系の枠超え学際的学びや地域課題解決を

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行財政

中教審部会

 中央教育審議会は17日、昨年4月の諮問を受けて設けた「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」を開き、関連の部会や有識者会議からの報告を受けた。高校改革を議論してきた作業部会からは、普通教育をする高校として普通科以外に「学際的な学びを重視する学科」などを制度化することが提案された。授業時数の在り方を検討している教育課程部会は、学校の判断で教科ごとの授業時数を弾力化できるようにする考えも示した。

 高校改革の作業部会は「論点整理」を報告。高校生の7割が学ぶ普通科について、生徒の能力や関心を踏まえた学習を提供する上で課題があると指摘した。
 そのため、普通教育をする高校として普通科の他に

 (1) SDGs(持続可能な開発目標)の実現など現代的な課題に対応する学際的な学びを提供する学科
 (2) 地域社会の課題解決に向けた学びを重視する学科

 ―を認めることを明記した。また、普通教育の範囲で特色ある教育を提供する学科を設置者判断で新設できるようにする。
 新学科を設置する場合には、文系・理系の類型にとらわれず教育するための要件を設けることとした。
 (1)の学際的な学科では、領域横断的な教育を系統的に実施し、高等教育機関などとの協働体制をつくる。(2)の地域社会の課題解決を学ぶ学科では各学年で探究的な学びを実施し、地元自治体や企業とコンソーシアムを設け、コーディネーターとなる人を配置する。
 授業時数などについて検討してきた教育課程部会も「審議経過」を報告した。
 学習指導要領が示す標準授業時数について、教育の水準確保に大きな役割を果たしてきたとする一方、教員や子どもの負担につながっていることに触れた。その上で学校の「カリキュラム・マネジメント」を促すためにも、学校の教育課程編成の裁量を明確にし、「1コマ」の時間を弾力的に扱えるようにする。また教科ごとの授業時数の配分を弾力化する仕組みを設けることも考えられる、とした。
 特別部会では、小学校の教科担任制の拡大策を議論してきた教員養成部会と、特別支援教育の有識者会議からの報告もあった。
 教員養成部会の報告では、小・中学校の免許状併有者を増やすため、教職課程で教育実習や教科指導に関する科目を共通の開設科目にすることを提案した。特別支援教育の有識者会議は報告で、年間を通じて障害のある子とない子が学ぶ活動を充実させることなどを求めた。

高校教育に詳しい早稲田大学教授の菊地栄治教授(教育社会学)
 中教審の高校改革の報告は、広域通信制の問題点を指摘し、教職員の努力や高校の福祉的機能の重要性を認識している点で一定の評価ができる。
 他方で普通科の改革案には不安もある。まず学科再編を求めている普通科の実態の質的・構造的な把握が十分でない。生徒の現状と齟齬を来し、彼らの可能性を狭める可能性がある。
 また新学科の設定が改革の成功を急がせ、同質的な生徒を集めることに終始し、「不確実性の時代」を生きる上で必要な普通教育を後退させる恐れがある。
 政治的・経済的思惑で繰り返される改革提案を脱し、政策形成・遂行・評価プロセスを重視し、改善することに期待したい。そこで評価基準とすべきは、生徒のエンパワーメント(力付け)に取り組む学校関係者を支える施策を打ち出せるかどうかである。もちろん、それには財政支援が不可欠だ。

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