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先生も子どもも楽しくなる小学校家庭科 授業づくりの理論と実践

14面記事

書評

岸田 蘭子 著
みんなで考え主体的に学ぶ授業

 本書は、著者の長年にわたる授業実践の積み重ねから確立した家庭科教育観を基に、「子どもはどのような力を付けるべきで、そのためにどのような授業の工夫ができるか」を軸にLesson仕立てで実践事例を紹介している。しかし、単なる指導例の提示や授業紹介ではなく、子ども中心の「みんなで考える家庭科」「子どもが主体的に学ぶ家庭科」を念頭に理論と実践が往還しているため、読後に「子どもたちのためにやってみたい」「これはみんなでやったら楽しそうだ」という気持ちが自然と芽生える。
 写真、図、表による教材やワークシート例の提示が豊富であり、授業の様子も詳細に書かれていたため、授業がイメージしやすく、現職にとどまらず、教師を目指す学生にも良書となろう。「実践のポイント」では重視すべき観点や気を付けるべき内容が端的に記されている他、所々で「子どもの声を聞いてみよう」「家の人・地域の人の声を聞いてみよう」など、生の声が記載されており、授業に組み込むべき視点や充実させるべき内容を、ふと立ち止まって考えるように工夫されている。また、「あなたへの問い」では、自身の主体的な家庭科への取り組みについて再考を促している。
 やはり、授業は楽しいから好きになる。好きになるからよく分かるのだ。本書は家庭科を指導する先生方の強力なサポーターとなる一冊である。
(2640円 ミネルヴァ書房)
(青木 一・信州大学学術研究院准教授)

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