日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

働き方改革を推進するGIGAスクールへ 今できることを進める姿勢に

8面記事

ICT教育特集

新保 元康 NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長(文部科学省ICT活用教育アドバイザー)

 「GIGAスクール」の話題が溢れる昨今。「学校の働き方改革」は、どこに行ったのでしょうか?
 実は、学校の働き方改革は、これからこそが本番なのではないでしょうか。GIGAスクールの実現に伴い、本格的な働き方改革も推進されるのです。本稿では、働き方改革を推進するGIGAスクールへのポイントをお話させていただきます。

(1)GIGAスクール構想を小さく解釈しない
 「GIGAスクール構想」と言えば、「一人一台」を思い浮かべますが、そこにだけ焦点を当てるのは、もったいないと思います。「クラウド活用」が本格化すること、そして何より「高速大容量の通信環境」が整うことが最も大きな改革ではないでしょうか。つまり、学校のインフラが変わるのです。
 ストレス無く通信出来る、ストレス無く情報共有できるという環境は、学校の働き方を大きく変えるものです。自動車が私たちの生活も仕事も一変させたのと同じ変化が起きようとしているのです。

(2)学校の「日常」を変える視点が大切
 (1)の話はとても大きなお話です。同時に、責任ある職業人としての私たちは、視線をぐんと落として、足もとを見る必要があります。
 一人一台のPCが整備されても、すぐに革命が起きるわけではありません。既に価値ある素晴らしいモデル実践がたくさん報告されています。それは、とても参考になりますし、目指すべきものです。しかし、自校の実態を見たときに、何から着手すべきなのか、見極めることが必要ではないでしょうか。
 多くの学校にとって、着手のポイントは、「日常」にあります。全部の学校が先進的なモデル実践をすぐに実施できる訳ではありません。先進校のエキスを消化し、自分の学校の日常にどう落とし込むかのステップを考えていくことが重要です。

(3)それぞれの役割がある~学校現場の小さなアイデアが大きな未来を創る~
 文部科学省、教育委員会、学校…日本の教育を支える「立場」は多種多様です。それぞれに役割があり、責任があります。文部科学省は、「構想」を「検討」「決定」し「予算獲得」する立場であり、教育委員会や学校は、その「構想」を「理解」し「実行」する立場ではないでしょうか。それぞれの立場毎に困難があり、それを乗り越えるアイデアが求められます。
 先日、北海道のある校長会では、早速GIGAスクールについての研修を行っていました。校長自身がクラウドの可能性を実感し、慣れていこうという試みです。自分のスマホを使って、クラウドにログイン。共同編集を体験していました。研修会後「校内でも、まず先生たちが慣れることから始めたい」という声が挙がっていました。この校長先生たちのように、小さなアイデアで、今できることを進めていく姿勢がとても重要だと思います。

(4)発想を変えて取り組む
 「丁寧に」「みんな揃って」「絶対間違いなく」というのが、これまでの学校運営の基本だったと思います。どれも大事なことですが、これだけでは前に進めなくなりますし、非常に大きな負担が伴います。
 「ポイントを絞り」「できることから」「まず試してみる」これが変革する学校に求められる姿勢ではないでしょうか。これを実行するには、管理職による戦略と覚悟が必要になります。「ICTの得意な先生に任せておこう」では決して進みません。GIGAスクール構想の実現は、学校経営の根幹であり、校長の発想の転換がなにより重要なのです。

(5)リーダーもフォロワーも見通しと覚悟が必要
 これからの学校は、全てにおいて「働き方改革」を意識することが大事です。無理無駄を省き、効率的に業務を遂行し、今まで以上に信頼され、魅力ある学校をつくることです。
 そのとき大切なのは、「変革の最初はどうしても負荷がかかる」ことを共通理解しておくことだと思います。「見通しをもつ」と言ってもいいでしょう。
 GIGAスクール構想では、クラウドで授業準備をかなり効率化できます。「オンライン上の良い教材を使う」「クラウドで教材の共有と利用を進める」ことで、働き方改革は進む可能性があります。しかし、「紙の利用」「自作の教材の利用」といったこれまでに慣れたやり方から一歩踏み出すのは大きな負担になります。最初は違和感も強いでしょう。この痛みの時期を、見通しをもって乗り越える覚悟がとても大事なのです。
 働き方改革にもつながるGIGAスクールの実現は、残された半年間の準備にかかっています。今こそ、リーダーシップを発揮する時です。働き方改革も進めねばならないため、今までの集合研修や校内研修だけでは限界がある。
 そこで注目されるのがeラーニング教材を使った研修だ。eラーニング動画教材「事例で学ぶ学校情報セキュリティ」(開発・販売=広島県教科用図書販売)を用いた研修をすでに行っている学校からは、「いつでもどこでも自分のペースで受講できる」「動画なのでわかりやすく短時間で学べる」「各教員の履修状況も把握できる」メリットがあり、研修の質向上と教員の働き方改革を両立できるとの報告が寄せられた。
 基調講演を行った東北大学大学院の堀田龍也教授は、「GIGAスクールでは、すべての先生が情報モラルやセキュリティを学び、子どもに教えられるようにならなければならない。eラーニングなどを用いて、効率的に繰り返し学んでいく必要がある」と強調した。
 このセミナーは11月、12月にも開催される予定だ。

 しんぼ もとやす 1958年北海道小樽市生まれ。札幌市内小学校で37年間勤務。2019年定年退職。現在、NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長。文部科学省ICT活用教育アドバイザーなどを務める。社会科教育、ICTを活用した学校経営、保護者・地域と学校の連携などについて各地の研修をサポート。著書は、「学校現場で今すぐできる『働き方改革』―目からウロコのICT活用術―」(2019年明治図書)、「校長の覚悟」(2020年教育開発研究所)など

ICT教育特集

連載