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災害時にライフラインが切断されても対応可能な給食施設へ

8面記事

施設特集

備蓄したLPガスを都市ガスに変換
防災減災対応システム「BOGETS」導入事例
東京・稲城市

 稲城市では、老朽化に伴い建替移転を進める学校給食共同調理場第一調理場において、災害時にライフラインが切断されても一定期間の稼働が可能になる、I・T・O(株)の防災減災対応システム「BOGETS(NEW PA30)」(ボーゲッツ)を導入し、非常時の炊き出し施設として活用できるようにした。そのねらいについて、教育委員会に話を聞いた。


防災減災対応システム「BOGETS(NEW PA30)」

民間活力を活用し、合理的で質の高い安全安心な学校給食を
 来年4月から稼働する第一調理場は、鉄骨造3階建、建築面積1710平方mの広さを誇り、市内の公立小中学校のおよそ3分の2の配食(6千食)を担う、新たな給食調理場として生まれ変わる。何より大きな特徴は、献立作成などは学校給食課職員が受け持つが、これまでの配送・回収業務に加え、調理、洗浄業務を民間に委託することだ。
 「市の給食調理場では初の試みとなりますが、民間活力を導入し、引き続き質の高い安全安心な学校給食を提供していきたい。施設面では省エネなど環境に配慮するとともに、HACCPの概念に基づき、汚染作業区域と非汚染作業区域の区分の徹底やドライシステムを導入することで、衛生管理をより一層強化しています」と概要を説明する。
 さらに、専用の調理室を設けることで、乳・小麦などのアレルギー対応食を提供できるようになったほか、食育の推進のため地産地消を重視することはもちろん、児童や生徒が見学できるスペースや試食の時に利用できる会議室も設けている。

都市ガスが止まった場合のバックアップとして導入、学校施設など避難所への炊き出しに活用
 その上で、もう1つの大きな特徴といえる、災害時に対応可能な施設となるために導入されたのが、防災減災対応システム「BOGETS(NEW PA30)」だ。
 このシステムは、あらかじめ備蓄しておいたLPガスを、都市ガスと同じ燃焼特性を持つPAガスに変換できるため、災害などで都市ガスの供給停止や停電などが起きても一定期間ガスと電気を確保することが可能になる。また、平常時は経済性に優れた都市ガスを使用し、非常時は備蓄性に優れたLPガスを燃料とすることで、ランニングコストの低減を図ることもできる。
 教育委員会では、これを都市ガスが止まった場合のバックアップとして活用し、学校施設などの避難所の炊き出し調理に使う計画だ。「市の防災計画では災害発生から4日目以降に食料の輸送などが可能になったとき、避難された地域の住民に3~4日間、ご飯と汁物の炊き出しを1万食ほど提供することを想定しています」
 こうした背景には、LPガスが災害時に活用できる「備蓄エネルギー」として注目されていることがある。LPガスのボンベは耐衝撃性を考慮した安全設計で、爆発防止機構などの機能も備えられている。しかも、灯油や軽油と違って年月が経っても劣化することがないため、長期保管が可能で災害対策として適しているからだ。
 実は当初、教育委員会では地域のガス事業者と災害時の協定を結んでいることから、LPガスを備蓄しない方針だった。しかし、ふだんから使用に慣れておくことが必要という判断から、現在は敷地内に備蓄することを決めている。
 そのほか、第一調理場では非常時における電気の供給手段として、屋上に設置した自家発電機や太陽光発電設備が利用できるとともに、飲料水も受水槽に70トンを備蓄。加えて、食料も米穀協会や農協などと災害時に調達してもらう地域協定を結ぶなど、設計段階からさまざまな対策を施している。

音声ガイドによるタッチパネル方式を採用 災害時のスピーディーな復旧を支援
 一方で、このような非常時に備えるシステムで肝心なのは、いざというときに本当に使えるかどうか。その点「BOGETS(NEW PA30)」は、これまで老人介護施設や病院などの豊富な導入実績の経験を生かし、ガスに関する専門知識がなくても簡単に操作できるよう、操作画面の表示と音声ガイドで手順をわかりやすくナビゲーションし、New PAの制御盤内のタッチパネルに触れていくだけで使用できるように配慮している。したがって、気が動転する災害時でも誤りなく操作でき、速やかにエネルギー源を復旧できるのが強みだ。
 さらに、「自動ガス漏れ確認機能」や「異常圧力遮断機能」といった安全を守る機能のほか、「原料ガス残液量の計測機能」や「自動パージ機能」も搭載するなど、さまざまな安心機能も搭載している。

来年2月以降に試運転を予定、不慮の事態が生じたときの次の一手として期待
 現在、第一調理場では来年度の給食提供に向けて準備が進められているが、「BOGETS(NEW PA30)」についても2月以降に試運転を行っていく予定だ。
 「大規模な災害が起きても都市ガスはストップしにくい中圧管の整備が進んでいますが、これまでの教訓からも想定外のことが起こるのが災害の怖さです。平時から備え、不慮の事態が生じたときの次の一手となるのがボーゲッツです。本施設に整備されたシステムは従来よりも操作方法が簡便化しているため、職員だけでも早急な対応ができると期待しています。試運転を通じて、実際の操作方法の確認や運転状況について検証を進めていきたいと考えています」と抱負を語った。


中島 英 稲城市教育委員会教育部学務課課長

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