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社会科授業づくりの理論と方法 本質的な問いを生かした科学的探求学習

16面記事

書評

渡部 竜也・井手口 泰典 著
発問の構造化で学び深める

 著者の渡部氏は次のように書き出している。(大学3年次当時)子どもに好き勝手に歴史を調べさせて発表させる「主体的な学び」タイプの授業を過剰に賛美する傾向にある講義に飽き飽きしていた。反知性主義であり、放任=無責任に思えた。かといって歴史学の成果を延々と解説する高校の歴史教師を好きになれず、悩んでいた。そこで出会った森分孝治氏の著書「社会科授業構成の理論と方法」と…実に小気味良い。
 教師志望の学生たちに模範授業のできる大学教授は極めてまれである。研究者は実践などをしていては研究ができないと豪語する教授陣が多く存在する。しかしだ。そこに学ぶ教職を目指す学生は、教育実践者として児童・生徒と対峙することになる。そんな中、勇猛果敢に授業示範のできるのが、この著者・渡部氏である。それも発問を構造化して、発問により授業の方向や質が大きく変わることを受講者に体験させるのだから、千葉県総合教育センターでは長年講師を依頼して現職教員をビシビシ鍛えていただいている。
 問いの構造図とは何か、本質的な問いとは何か、知識の構造図とは、科学的探求学習の授業プランとは、興味津々の内容が網羅されている。何といっても第1章の科学的探求学習の二つの指導案の提示による比較が著者の真骨頂である。歴史とは詳細かつ断片的な事実の集合ではなく…。
 続きは本書でお楽しみ願いたい。
(2420円 明治図書出版)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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