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教職をめざす人のための特別支援教育 基礎から学べる子どもの理解と支援

14面記事

書評

杉中 拓央・呉 栽喜・松浦 孝明 編著
外国ルーツ、貧困下の子にも対応

 タイトルに「教職をめざす人のための」と銘打っているが、改めて特別支援教育を学びたいと思っている現職の先生にも、子ども理解と支援を基礎から学べるお薦めの書である。
 本書の特徴は、通常学級に在籍する従来の障害児だけではなく、外国にルーツのある子どもや貧困下の子どもなど、現代の教育現場で直面する課題に対応した内容構成になっている。
 1章では、「合理的配慮」や「インクルーシブ教育」など特別支援教育に関わるキー概念を分かりやすく解説しており、2章では、クラスに2~3人はいると考えられる発達障害の子どもの心理や支援について述べられている。また、3章では、発達障害に起こりやすい二次障害の構造や対応、最近注目を集めるようになった「場面緘黙」の心理と支援を詳説している。概説本にありがちな発達障害偏重の構成ではなく、身体障害の心理と支援にもフォーカスしているところが興味深い。
 各章には、現場で直面するであろう課題を想定し、事例形式で学ぶことができるエピソード・スタディが設定され、またコラムも、きょうだい児、通信制高校における生徒の実態と支援など、充実している。
 読了後、障害のある子どもだけでなく、教師をしていれば出会うであろう障害のある保護者(難聴や車いすなど)への理解や接し方にも役立つのではないかと思った。
(2420円 福村出版)
(青木 一・信州大学学術研究院准教授)

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