日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

コロナ禍で注目が高まる卒業記念品

11面記事

企画特集

 卒業生から学校へ、学校から卒業生へ贈られる「卒業記念品」は、人生の節目の日を祝し、母校への感謝の思いを伝える大切な一品だ。とりわけ、来春に卒業を迎える子どもたちは、新型コロナウイルス感染症の影響をまともに受けた世代であることから、例年以上に思いを込めた記念品を選びたいところ。そこで、秋から本格化する学校の卒業記念品選びに参考となる情報を紹介する。

学校生活に影響を受けた世代だからこそ、思い出に残る一品を

学校行事の中止でより一層大切なアイテムに
 秋の深まりとともに選定時期を迎える卒業記念品。近年はインターネットの発展によって商品ラインアップも増加しているとともに、少子化や価値観の多様化が進む中で、もらって嬉しい記念品選びに頭を悩ます学校が多くなっている。また、学校やPTAに代わって生徒会主導による記念品の選定、少子化による全体予算の縮小など、それぞれの学校の実情に合わせた選定の仕方が求められるようになっている。
 しかも、来年卒業を迎える子どもたちは、新型コロナの影響によって学校行事や修学旅行が中止・縮小されたのはもちろん、日常の学校生活でもグループによる活動やコミュニケーションが制限されるなど、これまでは考えもしなかった経験をしてきた世代である。加えて、感染拡大がいつ収束するか予測がつかない中で、来春の卒業式も今年同様に簡素化や中止、あるいはソーシャルディスタンスに配慮したオンライン式典といった事態を余儀なくされるケースも考えられる。
 だからこそ、「せめて記念品だけは充実したものを子どもたちに贈ってあげたい」と力を入れる教員や保護者も多いはずだ。
 そのため、例年以上に記念品の選定に時間をかけたり、学校行事が中止・縮小になって浮いた予算をまわしたりする動きも始まっている。すなわち、今年の卒業記念品は学校や子どもたち双方にとって、より一層大切なアイテムになっているのだ。

衛生・抗菌製品や防災用品がトレンド
 また、感謝の思いを込めてPTAが学校に寄贈する記念品も、感染拡大防止のための衛生・抗菌製品や、防災・熱中症対策用品を贈るのがトレンドになっている。特に、学校は多くの子どもたちが一日の大半を同じ空間で過ごすため集団感染を引き起こしやすい状況にあるが、「三密」を回避するための環境整備が十分に整っているとは決していえない。したがって、サーモグラフィーなどの検温装置や、室内の換気に適したサーキュレーター、大型送風機、空気清浄機や加湿器などを候補に挙げるPTAも多くなっている。
 加えて、災害時は地域の避難所となる屋内運動場用として、これらの機器とともに、スポットクーラー、冷水機、業務用ヒーター、発電機、ポータブル電源、無線LAN機器、スピーカーセット、テント、簡易ベッド、防災・非常用グッズ等を寄贈するケースも増えている。
 こうした感染症対策・防災用品は、児童生徒への卒業記念品としても採用が始まっている。たとえば、非常用持出袋やLEDライト、ランタン、携帯ラジオなどは災害が起きたときの備えになるほか、熱中症予防となる涼感タオルなどのクールアイテム、コロナ禍に配慮したマスクケース、パーソナル加湿器、抗菌エコバッグ、非接触マルチキーホルダーなども登場している。

SDGsに配慮した環境負荷低減商品も
 一般的に、卒業生に贈る記念品の単価はおおむね千円未満といわれている。その中で根強い人気を誇っているのが、ボールペンや時計、フォトフレーム、キーホルダー、辞書、印鑑などの名入れできるノベルティグッズだ。
 ただし、木素材やステンレス品など印刷技術の進化によって名入れできる商品ラインアップが豊富になっており、そのぶん選択肢の幅が広がっている。また、通販サイトの拡大によって価格競争も過熱していることから、少子化に伴う小ロットの受注でも価格が抑えられるようになっているのが、近年の特徴だ。
 さらに、持続可能な社会の実現に向けたSDGs教育への関心の高まりから、エコや環境負荷の低減に配慮した商品を選択する傾向も高まっている。代表的なアイテムとしては、レジ袋の削減から注目されているエコバックや、使い捨てペットボトルの利用を少なくするマイボトルなどだ。
 そのほか、近年深刻な問題となっている海洋プラスチックゴミを減らす取り組みとして、竹素材やゴム素材、廃棄素材を原料としたスプーンセットやタンブラー、スマホスタンド。さらには、地元の間伐材や廃材を使った木製時計やフォトフレームなどのアイテムを開発する地域企業も年々増えている。

 子ども目線で「もらって嬉しい」記念品を
 とはいえ、卒業記念品はPTA・先生が決めることが大半なため、どうしてもマンネリになったり、センスがないものを選んでしまったりするという声も多い。せっかくお金をかけるのだから、すぐに忘れられてしまうような記念品を贈るのはできれば避けたいところ。今はインターネットの普及に伴って通販サイトの数も増えており、探そうと思えばいくらでも情報が手に入る時代だ。だからこそ、予算が少ない中でも「もらって嬉しい」「いつもの年とは違って実用的だ」など、時代に合った商品の選択に力を入れてほしい。
 たとえば、ここ数年では日常的に使えるモバイルバッテリーやUSBメモリ、スマホケースは、中高校生の間でもっとも評判が高いアイテムとして定番になっている。ただし、容量が十分でなかったり、学校名など印刷デザインのセンスが悪かったりすると本末転倒になることをお忘れなく。

部活の記念や先生への感謝を込めて
 加えて、部活動やクラス単位で思い出の品を贈ったり、先生への感謝を込めて生徒から贈ったりする「新しい卒業記念品」の需要も年々高まっている。特にスポーツが盛んな学校では卒団記念として、ユニフォームをデザインしたキーホルダーやタンブラー、バッジ、記念盾、ランドリーバッグ、タオルなどを贈るケースが増えている。また、野球やサッカー、バレーボールといった、それぞれの競技に合わせた記念ボールを制作して贈呈することも。これらには個人名はもちろん、背番号や、その年のチームならではのキャッチフレーズなども刻印できるのが魅力となっている。
 学校の部活動は新型コロナの感染拡大によって練習や試合などの活動が制限されたため、思う存分に活躍できる機会をなくして心残りを抱えている子どもも多い。それだけに保護者が記念品に託す思いは強くなっており、確かな証として残す記念品としての価値も高まっているのだ。


中高生に人気のモバイルバッテリー

企画特集

連載