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共に揺れる、共に育つ 四十年間教壇に立った或る教師の想い

18面記事

書評

杉原 米和 著
関係築き成長待つ大切さ説く

 本書は教育実践の書ではない。あるいは教育に関した理論書でもない。しかし読んでいくうちに、著者の文章に引き込まれていく。
 著者は自分の教師生活を振り返り、書名に言及しながら次のように語る。
 <思春期の生徒、保護者、それに教師が、共に揺れながら生きる。むしろ、共に悩む中でこそ、人は育つと私は考えている>
 昨今の教育界を見ると、学力向上、不登校への対応、いじめの防止、GIGAスクールの推進等々、待ったなしの教育改革が求められている。息苦しくないだろうか。
 著者が期待している生徒の成長を「待つ」というような姿勢が希薄になり、ただもう多忙感ばかりが学校現場に蓄積されている。
 教師と生徒の関係は、どうあればいいのか。著者の次の言葉をかみしめなければならない。
 <生徒と教師が良い関係であれば、生徒は学び伸びようとする。…人を変えようと焦るより、関係性を耕すことが大事であろう。>
 この正論が通りづらくなっているのが、現在の学校の状況ではないか。本書の語り掛けるようないわば、教育エッセーを読み、心を潤わせて、教育実践に励むような教師が出てくることを期待したい。書名にある「共に育つ」というキーワードの大切さを、本書を読んで再確認した。
(1760円 りょうゆう出版)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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