日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

整備は世界屈指 活用へ全力で支援 GIGAスクール構想1年目

13面記事

ICT教育特集

 GIGAスクール構想1年目を終え、学校現場と行政側のそれぞれから見た成果と課題を文科省の板倉寛・初等中等教育局学校デジタル化プロジェクトチームリーダーに振り返ってもらった。

 GIGAスクールの構想以前の日本はICTの国際的な傾向とは異なる状況が見受けられてきた。例えば、2018年に行われた国際調査では、日本は学校の授業(国語、数学、理科)におけるデジタル機器の利用時間がOECD加盟37カ国中、最下位であった。一方、学校外での利用状況では、「ネット上でチャットをする」や「1人用ゲームで遊ぶ」は、OECD加盟国中、最も高いという結果であった。受け身的な活用に偏り、学習での使用や何かを作り出す経験が少ない状態という意味で、OECD加盟国中、最後列にいた。
 整備面においては、GIGAスクール構想として、関係者の多大なご尽力により、児童・生徒の1人1台端末と、通信ネットワークが全国全ての地域に整備され、教育の機会均等の実現を支えることとなる。ネットワーク等の課題は多くあるが、全体としてみると、整備面では世界的には最前列に立っている。
 活用面はどうだろうか。1年近くたって、ICT活用の強みを生かした授業改善が行われている学校もそうではない学校もある。都市部でも中山間地域でも同様である。一つ一つ着実に前に進めていく必要がある。できている学校や先生方は、どんどん改善していただき、可能であれば周りの支援にも携わっていただけるとありがたい。今できていない学校も全体で取り組めば必ずできるようになる。
 現在できていない学校でも奮闘する先生方も多くいらっしゃるが、周りの理解やサポートを必要としている。進んでいない地域の関係者は、成長機会を得られないのは子どもたちであり、子どもたちはICTが今よりもずっと大きな存在感を持つ社会で生きていくことを忘れずに、強い危機感を持っていただき、頑張っている先生方をサポートする必要がある。
 全ての学校の水準向上のため、私たちも精いっぱい支援をしていきたい。まず、整備面は令和3年度補正予算を最大限活用していただきたい。整備面は改善の成果も見えやすく、一気に追い付ける。また、活用面の支援については「GIGA StuDX(ギガ スタディーエックス)推進チーム」の取り組みをご承知いただければと思う。
 教員出身のメンバーが担当地域を持ち、教育委員会の担当者等と協働体制をつくり上げ、現場の関係者が抱える悩みや課題をくみ取りながら、ニーズに応じたきめ細かな支援を行っている。どの地域でも活用できる事例や各地の新たな取り組み等の情報提供を図るための「GIGA StuDXメールマガジン」を配信している。特に進んでいない地域の関係者には、まずこのメルマガ登録から始めてほしい。また、働き方改革にも資するよう校務の情報化の検討も加速する。
 常に取り組みの改善を図り、教育現場と一緒にスモールステップで着実に前に進めていきたい。

板倉 寛(いたくら・ひろし)
 学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、GIGA StuDX推進チームリーダー、学びの先端技術活用推進室長、初等中等教育局視学官、文科省大臣官房文部科学戦略官、デジタル庁統括官付参事官。1999年文部省(現文科省)入省。教育課程課係長、内閣官房副長官補室参事官補佐、島根県教育委員会総務課長、特別支援教育課課長補佐、大臣政務官秘書官、初等中等教育企画課課長補佐、在英国日本国大使館参事官(外務省出向)、教育課程課教育課程企画室長、情報教育・外国語教育課長等を経て現職。

ICT教育特集

連載