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2030年の学校をつくるスクールリーダーへ 学校が変わるために、今、必要なこと

14面記事

書評

『教職研修』編集部 編
識者22人が価値観揺さぶる提言

 本の題名から、Society5・0、社会に開かれた教育課程、持続可能な社会の創り手、「主体的・対話的で深い学び」等々のキーワードが浮かんできた。これらは全て学校の教育的側面であり、2030年の社会で活躍する子どもたちに育てたい資質・能力の話題が満載であるかと思い描いていた。ところが予想に反し、収束が見られないコロナ禍でますます重視されている福祉的側面から学校の価値観を大いに揺さぶってくれる内容であった。22人の識者とのインタビュー形式の本著にぐいぐい引き込まれる自分をすぐに発見した。
 また、冒頭のキーワードが全くと言っていいほど出てこないことも特徴の一つである。学校の当たり前、多様性、自立、主体性、人権、アート等々、話題はさまざまだが、どの識者にも共通するメッセージは、「自分で考えること」の大切さである。野本響子氏の「学校の『やめる』練習」は現在の日本に蔓延している閉塞感の真因を説いているように思えた。また、岸見一郎氏のアドラー心理学の見地からの論調に認識を新たにしたところである。
 そもそもの学校論(学校とは何をなすべきところか)、教師論(教師とはどういう存在であるべきか)を見つめ直し、スクールリーダーはもちろん学校教育に携わる全ての人が前向きになれる貴重な一冊としてぜひお薦めしたい。
(2200円 教育開発研究所)
(中川 修一・東京都板橋区教育委員会教育長)

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