日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

生徒の自主性と学習意欲を引き出すICTの活用

11面記事

ICT教育特集

実践校によるリブリ―を活用した授業の様子

公立校でも導入が進むデジタル教材プラットフォームとは

 一人ひとりの生徒の力を最大限に引き出す、個別最適化された学びの実現が求められる中、いつも使っている教科書や問題集をそのまま電子化し、タブレットやスマホで学習できるデジタル教材プラットフォーム「Libry(以下リブリー)」を導入する中・高校が増えている。ここでは、数学科の学習指導で活用している、半谷徳夫教諭(福島県立福島高等学校)と山片大典教諭(岡山県立瀬戸高等学校)に、その魅力を聞いた。

ICTを活用する機運が高まる中で

 福島高等学校は校内すべてに整備されたWi―Fi環境のもと、授業などで生徒所有のスマホの使用を認めているのが特徴だ。また、今年度の新入生からはBYODによるタブレット導入を実施するとともに、新たに教員の授業用端末や全教室へのプロジェクタが配備。各教科の教員がパワーポイントで授業資料を作ったり、グーグルアースを使ったりと校内全体でICTを活用する機運が高まっている。
 その中で、半谷教諭はこれまでも教室にプロジェクタを持ち込んで、生徒がスマホで撮ったノート写真を投影する、オンライン上に共有フォルダを設けて回答を確認するといったICT活用を進めてきた経緯がある。
 リブリーを導入した理由としては、ちょうど同校でICT教育を進める話が出てきたタイミングだったことを挙げる。
 「2年前、現3学年を受け持つことが決まったときで、参考書もデジタルに対応した啓林館の『フォーカスゴールド4th Edition』を選択したこと。加えて、部活動で遠征する生徒からは参考書が重くて持ち歩くのが大変という声もあり、スマホでも見られた方が便利になると考えたからです」と振り返る。
 また、もう一つの理由としては、板書+演習からICTを活用した予習+学び合いへと授業スタイルをがらりと変えたことにある。「以前から板書する時間がもったいないと考えていました。また、リブリーで参考書の例題を宿題として配信しておけば、その回答をもとに生徒同士で話し合わせたり、別解を考えたりと理解を深めるための時間に使えるという思いがありました」

主体的に学ぶ姿勢に変化、学習を記録する価値にも気づく

 こうした授業でのICT活用を続けてきた生徒の学びの変容としては、「不明点をすぐにスマホで調べる、授業外で教え合う、自習で使うなど、自ら主体的に学ぶ生徒が多くなったことです」と語る。リブリーの活用でいえば、宿題配信した課題以外を自主的に進める生徒が見受けられるようになってきた。
 その要因として大きいのが、自分の学習状況を可視化できるリブリーの特徴だ。「管理画面を見ると、普段は紙の参考書を活用している生徒も、リブリーで回答結果をきちんと記録している。つまり、自分の苦手なところを把握し、復習できる価値を感じていることが分かります」と評価。今後もICT活用のメリットを生かしながら授業に取り入れていきたいとした。

提出物管理が楽に、生徒の学習意欲もアップ

 瀬戸高等学校は昨年度、第1学年(131名)に1人1台端末を導入した。山片教諭がこれを機にリブリーを導入した理由は、一人ひとりの学力を確実にアップさせることにあった。というのも、近年は定員割れが続き、学力の低下が課題になっていたからだ。
 「リブリーは解いた問題を自動で蓄積し、その学習履歴に基づいて問題の検索や苦手問題などに取り組めるため、生徒がより効率的な学習ができると思いました」と話す。
 最初は、東京書籍の問題集『改訂版ニューアクションβ 数学Ⅰ+A』を自宅での週末課題として配信することから始めた。その中で実感したのが、提出物管理が楽になったこと。「誰がいつ提出したかが一覧で表示されるため、毎週ノートで回収・チェックした時と比べて時間が大幅に短縮できました。また、問題ごとの正答率も一目で把握できるので、たとえば二次関数ではこの部分の理解度が低いなどが分かり、授業改善にもつながるメリットを感じています」
 学習習慣の定着に向けては、生徒自身が学びを可視化できる点が大きいという。「解いた問題数や学習時間といった学習履歴が残っていくので達成感が味わえ、それが生徒のモチベーションを上げる要因になっています。また、テストだと生徒は点数しか見ていないので、苦手な単元など弱点を客観的に提示してくれるよさがあります」と指摘する。

多様な学習支援機能で主体的な学びをサポート

 そうした意味から取り組み始めたのが、定期考査に向けた自主的な演習問題の活用だ。リブリーでは一人ひとりの学習効果を高めるため、学習履歴に応じて自動で出題する多様な学習支援機能が搭載されている。それゆえ、ストップウオッチ機能で解答にかかる時間を意識し、ゲーム感覚で圧倒的な問題数をこなす生徒、電子化した参考書の解説を読み込みつつ、苦手なところの例題に何度もチャレンジする生徒もいるという。
 ただし、現状ではこうした機能を十分に生かしきれていない生徒もいるため、「次年度は苦手単元などを克服する流れまでをしっかりと植えつけ、確かな学力の定着に役立てていきたい」と山片教諭。さらに、今後に向けては登下校中など空いた時間にも学習できるよう、スマホでの活用にもトライしていく考えだ。
 WEBセミナー動画にて山片教諭の指導実践を紹介。動画はこちらより見ることができる。

学習履歴ページから、間違えた問題を選んで取り組める

ICT教育特集

連載