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心に残る校長講話集【第120回】

5面記事

管理職・学校経営

卒業式式辞の骨子
杉本 賢二 山梨県道志村立道志中学校校長

 新年を迎え、約2カ月後には各学校で卒業式が行われる。式辞の骨子として、「義務教育課程修了の確認と祝福、活動を讃えて激励する」を取り上げた事例の一部を紹介する。その際、「『いのち』を伝える学校講話―3・11を越えて」(渡邉正樹編、教育開発研究所)に掲載されている元仙台市立中学校校長の菊池省三先生が寄稿された「無念の思いと裸の心と」などを参考・引用した。

 日常生活は、どんどん便利になっています。しかし、人間の幸福は便利さの中にあるのではなく、「人と人との関わりの中にこそ」あるのです。郷土を誇り、ノーベル賞を受賞した大村智先生も、研究で迷ったときは「どちらが人の役に立てるかを判断基準にした」と言っています。
 その時、忘れてはいけないのは「命」についてです。皆さんが4歳の時に東日本大震災が発生し、1万8千人以上の尊い命が失われました。
 被災地には、なっちゃんというダウン症で全盲の障害がある子がいました。大津波が来ると悟った祖父母は、なっちゃんを車に乗せようとしました。しかし、このままでは間に合わないと判断した祖母は、「おらはいいから、早く車走らせろ!」「頑張って生きろ!」と、大声で車の発進を促し、発車した後から「なっちゃん! バンザイ、バンザイ」と叫びながら津波にのみ込まれてしまったそうです。
 「亡くなった方々が一度だけ生き返ってくれたら、何を話してくれるでしょう」「もっと一緒にいたかった…」…。志半ばで命を失った方々の「無念の思い」を心に刻み、卒業生の皆さん一人一人の興味や関心、得意なことを生かして自分の力をさらに伸ばし、道志中の卒業生として「社会に貢献し、人の役に立つ人間」になってください。

 話の途中で、「学園祭の団結力」「気遣い・心遣い」「卒業生の手紙・お礼の言葉」を取り上げ、卒業生の活動も称賛した。命を大切にしながら成長し、社会貢献をしてほしいという願いを込めた式辞となった。

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