日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

経営のキーワードは「整える」 学校便り通じ課題明示

4面記事

学校運営

実態に合わぬ活動見直す 単元テスト、全員担任制…

 かつて、宿題や定期テストを廃止し、全員担任制を導入したことなどにより全国的に注目を集めた千代田区立麹町中学校(堀越勉校長、生徒426人)。当時の工藤勇一校長の著書『学校の「当たり前」をやめた。』は多くの教育関係者に読まれ、類似の取り組みが各地で行われている。しかし、同校では現在、生徒の実態に合わないことから見直しが進められている。今回から3回にわたり、同校の現在の姿を紹介するとともに前校長のインタビューを掲載する。

東京・千代田区立麹町中学校 上

 工藤校長が同校で勤務したのは平成26年から令和元年度までの6年間。その後、長田和義校長(現武蔵野大学教授)が令和2年度から4年度まで務め、令和5年度に堀越校長が着任した。
 過去の同校の改革が、どのように引き継がれているのか。その姿を一目見ようと、全国から視察の依頼があるが、堀越校長は「各種の取り組みの実効性を検証している最中」との理由で、積極的に受け入れてはこなかった。
 堀越校長が対外的に現状を発信し始めたのは、昨年10月発行の学校便り(令和5年度第6号)から。同校の課題を明示し、今後の方向性を打ち出す内容が多く、2月9日現在、13号まで発行している。
 堀越校長は学校づくりのキーワードを「整える」としている。学校経営で大事なのは、「目の前の子どもの実態を踏まえて、より効果的な取り組みやアプローチを考え、バランス良く全体を整えていくこと」と言う。現在の同校や生徒の実態にそぐわない取り組みがあれば、原因を丁寧に探り、改善策を模索してきた。時には、過去に同校で勤務していた教職員に連絡し、その活動が導入された狙いや背景なども調べた。
 学校便りに示した「整える」ための視点は、

 (1)教育目標
 (2)テストの在り方
 (3)担任の在り方
 (4)体験的学習の機会を確保
 (5)授業時間を確保
 (6)教育課程を編成

 ―など。学習指導要領や「千代田区共育ビジョン」を根拠にした。
 (1)の教育目標の「自律」については、「自由」と混同してしまいルールやマナーをおろそかにする生徒がいると指摘。「勘違いを整え、誰もが安心で安全に過ごせる」ようにするとしている。また、生徒の主体性を優先するあまり、指導や支援が十分に行われてこなかったという課題に触れている。
 (2)のテストの在り方については、定期考査の廃止に伴って導入された「単元テスト」の問題点を列挙した。
 (3)の担任の在り方では、全員担任制は「チーム医療」の考え方を参考にしたもので、誰一人取り残さない教育システムと広報されてきたが、生徒へのアンケート調査では、4人に1人が「悩み事を相談できる先生やスクールカウンセラーがいない」と感じているというデータを示した。保護者からも「自分から主体的に動ける子と動けない子との間に格差が生じる」「誰に相談したらよいのか分からない」といった声が寄せられてきた。
 そのため、「いつでも相談できる」体制を充実させながら、「いつも看ている」を両立させ、自分から声を上げられない生徒と丁寧に向き合うようにしたいと結んでいる。
 これらの方向性については昨年12月、保護者会で説明。同校の実情が分かる各種のデータを示しながら伝えた結果、おおむね理解を得られたという。
 堀越校長は現在の同校の課題として

(1)各種学力調査で、生徒の学力の2極化が激しく、全体を見ても3年間で低下する傾向がはっきり見られる
(2)単元テストが連日のように行われる影響で、生徒の4割が家庭等で勉強しておらず学習計画も立てていない
(3)不登校の生徒を生み出しやすいシステムになっている
(4)生徒の進路が多様であるにもかかわらず職場体験学習が行われてこなかった(現在の「模擬インターンシップ」は直接体験の場がない)

 ―ことなどを挙げた。

学校運営

連載