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校長塾 経営力を高める最重要ポイント【第539回】

4面記事

管理職・学校経営

堀越 勉 千代田区立麹町中学校校長
勇気とエビデンスで学校を立て直す
学力低下 不登校… まずは各種データを隠さず公開

 大きな課題のある学校への着任では、策を講じる勇気が必要である。今回から8回にわたり、私が麹町中学校の課題に正対し続けた1年間を紹介する。
 本校への着任初日の夜、一人の教員が相談があると校長室を訪ねてきた。着任式と始業式についての不安だ。これまでの光景を語った。生徒は体育館で整列せず、車座になって座っている。教職員は号令も掛けない。私語がやまない中で、着任教員のあいさつが始まるというのだ。一瞬、信じられないと思いながらも「全教職員の総力を集結して、整列のできる学校にしましょう」と答えた。「主体性」や「自律」を旗印にしてきた学校の現状、支援の名の下に指導を回避してきた結果の姿が、ここまでとは、想像を超えていた。
 翌日の職員会議、私は着任式・始業式の教職員の目標を「生徒を縦に整列させる」の一点に絞って明言した。「皆さんが前任校で並べたように並べてください」と伝え、「小学校では整列しています。高校に入れば整列します。整列指導を受けないのは本校での3年だけです」と付け加えた。
 本校への着任の命を受けたときに千代田区教委から受けたミッションは、「麹町中の立て直し」である。これまでの課題を明らかにし抜本的改革を進めることだ。「正しい教育を進めるために思い切りやります」という私の誓いに対し、区教委の専門職、区役所各課の専門部署の皆さんに全面的に支援を頂いてきた。「現状維持は後退なり」。本区・堀米孝尚教育長の言葉に背中を押していただき、勇気を持って改革に取り組むことができた。
 さて、何が正しい教育かという点が問題になる。私は施策の設定に当たって、学習指導要領を根拠とした。本校の現状の背景に学習指導要領軽視の経営姿勢があると考えたからだ。さらに、これまで公表してこなかったデータを包み隠さず、可能な限り公表した。学力低下、生徒指導、教育相談、不登校等さまざまな経年のデータを学校運営協議会で示した。初めて見る衝撃的な内容に「よくぞ本当の姿を示してくれた」との声が上がる。地域からは「麹町中学校は溶けてなくなった」と厳しい言葉も届けられた。そして、「麹町中を立て直してほしい」という地域の熱い願いが追い風となり、改革のスピードが加速した。
 1年間かけて、教職員の総力を集結した指導が行われる風土が醸成されてきた。生徒は、教職員の姿勢が変わったことを敏感に感じ取り、本来の落ち着いた学校へと変化しつつある。

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