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一刀両断 実践者の視点から【第677回】

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非認知能力の評価

 小学校1年生の通知表を廃止する地域が出てきたという。かつて、評価を専門とするある大学の学長と指導と評価について懇談したことがあるが、そのとき、「何のために評価するのか」がはっきりしないと感じた。
 人が人を評価するのは非常に難しく、その責任を取りきれない場合が多い。
 ある学者は、認知能力こそ重要であり、非認知能力は測れないと断言していた。しかし、実際にその人物に会ってみると、なぜか魅力を感じられなかった。私には、むしろ最終的な判断は非認知能力に基づいて行われることが多いように思える。
 たとえば恋愛もそうだ。相手に好かれようとして自分を抑えながら付き合い、やがて結婚に至ると、互いのすべてを受け入れる覚悟が必要になる。「恋人としてはいいけれど、結婚相手としては悩んでしまう」という相談を受けることもある。
 私は、かつて人事任用の責任者をしていたときも、大学の学生を評価する際も、最終的には非認知能力を重視して判断してきた。そして今振り返ると、認知能力だけで判断した人よりも、非認知能力を重視した人の方が、確実に成長していることが多かった。
 教師は、評価を気にして育った経験が多いようだ。そのため、非認知能力の評価の必要性を肌で感じていながらも、そこに踏み込めなかった人も多いのではないか。
 通知表の廃止という動きは、今後さらに広がっていくのではないだろうか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)

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