一刀両断 実践者の視点から【第682回】
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子どもがモラルを学ぶ場は
千葉県教育委員会が実施した調査によると、学校でセクハラを受けて「不快」と感じた児童・生徒の割合が、前回調査より約3割増加したという。県教委は、この増加の要因として、アンケート実施前に視聴させた啓発動画の影響が大きいと分析しているとのことである。
セクハラやパワハラは、本来どのような場でもあってはならないものであり、特に立場の弱い者を守るという観点からすれば、明確に排除されるべき行為である。また、それを「不快だ」と発信できるようになることは、人権意識の向上という点でも意義がある。
一方で、「指摘されるからやらない」「罰せられるからやらない」という行動の抑制には限界があるとも感じる。本来、やってはならないことは自ら律し、節度と品位を持って行動すべきであり、そのような自制心があれば、誰に見られているかを気にする必要もない。
「罰を恐れるからやらない」という姿勢は、自制とは言えず、むしろ他人の目を逃れて陰湿に、あるいは法の抜け道を使って行為を続けるという悪知恵が助長されかねない。
したがって、被害に遭わないようにするための意識啓発と同時に、加害者を生まないような仕組みや教育のあり方も、今後さらに強化していくべきである。そうした観点からは、マナーや品位といったモラルの実践を、できるだけ早い段階から身につけさせる必要がある。
では、それをどの教科で教えるべきか。おそらく「道徳」が中心となるだろう。しかし現実には、道徳の授業が「読解力道徳」にとどまり、子どもの内面にまで深く届いていない現状がある。そこに、教育の限界や無力さを感じずにはいられない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)