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広島・福山市教委 「主体性尊重」の方針を見直し

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市町村教委

 広島県福山市教委は2日、市の教育振興基本計画を改定し、子どもの主体性尊重などを掲げた方針「100NEN教育」を見直した。全国学力・学習状況調査の低迷などを受けた。今後は授業改善を進め、学習指導要領に示されている資質・能力の定着を目指す。
 同市の市制100周年だった平成28年から始まった「100NEN教育」では、ICTも活用し、子どもの主体性を尊重した主体的・対話的で深い学びの推進や、イエナプランを導入した学校の開設などで教育界から注目を集めていた。
 6月16日に開かれた市議会での一般質疑への答弁の中で小林巧平教育長は、全国学力・学習状況調査での正答率が4割以下の児童・生徒が増加していることを指摘。生活面でも家庭学習の時間が短い、スマートフォン・ゲームの長時間使用といった課題があるとして「こうした状況に危機感がある」と述べた。
 同市教委では昨年度、学校関係者からのヒアリングを実施。主体的・対話的で深い学びに対する誤解があったとして、小林教育長は「子どもたちの主体性を過度に尊重して、十分な指導が行われなかったり、必要な学習活動を子どもたちに課すことを控えたりする」状況があり、学力定着・向上への取り組みが不十分との認識を示した。
 同市教委の担当者によると、「漢字や計算などのドリル学習(反復学習)を控える」「グループでの話し合いで間違った方向に行っていても、教員が修正するのをためらう」といった例があったという。
 改定した市の教育振興基本計画では「100NEN教育」の文言は削除。イエナプラン導入校での実践などは継続しつつも、「確かな学力」の育成に向けて、児童・生徒の学力の状況を把握・分析し、必要な授業改善や個に応じた指導・支援の充実を進めるとした。
 学習指導要領に示されている主体的・対話的で深い学びの実現を目指しつつ、子どもの主体性尊重と、教師が指導力を発揮して導くことの両立に向けて教員研修を進めていく考えだ。

市町村教委

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