一刀両断 実践者の視点から【第693回】
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正しく疑う力を
市長の卒業に関する疑惑が連日報道されている。こうした状況を、市内の児童生徒はどのように受け止めているだろうか。
選挙で選ばれた市長に不正の疑いがかかるとなれば、「大人は汚い」「信用できない」という印象を抱く子どももいるかもしれない。
教育現場の教師が、この問題をどのように指導し、子どもたちを導いていくのか注目したい。まさに「生きた教材」とも言える出来事である。
市長は、検察に書類を提出して判断を仰ぐと述べている。つまり、検察は正しく物事を判断してくれる機関である、という前提に立っていることになる。
しかし、議会では、卒業証書の真偽がうやむやにされる可能性があるとして、強い危機感が示されたらしい。本来、法的機関に委ねれば、正邪が明らかになるべきだが、今回のケースではその前提が崩れかねない。法が「逃げ道」として機能してしまう恐れがあるという現実がある。
こうした事態を受けて、議会では早急に百条委員会を設置した。これは兵庫県のケースに似ている。しかし同時に、法が正しさを示せず、迷路に入り込んでいるようにも見えるのが、今の日本の姿ではないだろうか。
安倍元首相が銃撃されてから3年が経過し、ようやく事件の真相に関する審議が始まったことも、その一例である。
人を信じることは大切だが、それ以上に「正しく疑う力」を育てることが、今の日本社会に必要なのではないか。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。千葉県教委任用室長、主席指導主事、大学教授、かしみんFM人生相談「幸せの玉手箱」パーソナリティなどを歴任。教育講演は年100回ほど。日本ギフテッド&タレンテッド教育協会理事。)