書くひとのための感情を表すことば430
16面記事
ながた みかこ 著
由来や文豪の使用例も紹介
ネット上でやりとりする言葉が増え、いわゆる若者言葉も耳にすることが多くなってきた。決して否定するものではなく一つの文化の側面としては興味深いところでもある。しかし、大和言葉といわれる時空を超えた古風な表現には日本語の美しさを感じる。例えば「雨」を表現する言葉。五月雨、春時雨、秋霖、驟雨、小糠雨等々。四季の美しい日本ならではの豊かな言葉だ。本書はそのような「和」を感じる古風な表現を中心に430の言葉を厳選し解説している。書く人にとってはまさにありがたく有益な書である。
本書は、第1章「喜びや楽しさを伝えたいときのことば」から始まり、「好意や敬意を表すことば」「他人との上下関係をにおわせることば」など全10章で構成。中には「人や物を悪く言うトゲのあることば」といったユニークな章立てもあり、軽妙な雰囲気で読むことができる。
特に秀逸なのは解説。意味や由来といった内容に加え、使われ方の例を泉鏡花、若山牧水、太宰治等々、著名な文筆家の名文から紹介。言葉をより深く味わうことができる。
各章には、二~五つの節を設定。第2章の「悲しみや寂しさを伝えたいときのことば」では
(1)心に秘めた静かな悲しみ
(2)声をあげて涙するような強い悲しみ
―といった具合。さらにページ左端にはインデックスが付されてあり使い勝手が良い。手元に置いて活用したい一冊。
(2090円 笠間書院)
(藤本鈴香・大谷大学教職アドバイザー)