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教員不足 誰が子どもを支えるのか

16面記事

書評

佐久間 亜紀 著
現場実態に沿う調査で要因追究

 「教員不足」とは何か。教職や教師教育の歴史などを主な専門とする著者は、この問題にアプローチする過程で、これまでの教員配置に関する学術的研究が、子どもや教員の側からではなく、主に教員を配置する行政側の目線で行われてきたことに気付く。また、教員配置の問題は、実は広く社会の根幹に関わる複合的な問題でもある。本書は、そうした新たな視点から取り組まれた研究の成果物であり、非常に説得力がある。
 例えば、文科省調査は教員不足の実数ではなく「換算数」で計算している。いかにもお役所的で、現場の実感と合わないのは当然だ。著者はその必要性にも理解を示した上で、現場の実態に即した教員の不足状況を明らかにするために独自の調査を行っている。
 教員不足は、行財政改革と教育改革によって人手も予算も減らされたところへ、ひたすら仕事を増やされ、さらに団塊世代の大量退職や少子化の加速などの社会的変化が重なって生じた、との分析は正鵠を射ている。
 また、公立学校が教育だけでなく社会福祉や地域防災などの機能も担わされているというまごうことなき現実を、英語の教員は不要で音声教材で代替すればいいなどと安易に言う偉い人たちに、少しは認識してもらいたいものだ。政策に係る今後の議論に、本書が提示する重要な論点が生かされることを強く願いたい。
(1056円 岩波書店(岩波新書))
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

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