BE THE PLAYER 自治体丸ごと学びを変える、加賀市の挑戦
14面記事
島谷 千春 著
教員の力信じ組織動かすトップ
皆さんの学校の子どもたちは、「授業を進めるのは先生でなく自分だ」と思いながら学んでいますか? 本書は、内閣府で「Society5.0」の政策パッケージを担当し、令和4年に石川県加賀市教育長に就任した著者が、「加賀市の公立全小・中学校の教育を抜本的に変える」をミッションにチームとして取り組んだ2年半の「壮大な団体戦」を、軽快なテンポで著している。
学びを変えるための五つのデザイン戦略、
(1)ビジョン
(2)コミュニケーション
(3)教員研修
(4)授業・学びの空間
(5)広報・PR
―の具体的な解説は、世の教育長だけでなく、各学校の校長が自校を変革する指針ともなる。
例えば、先生たちがやらされ感なく自ら行動変容するため何より大切なのは「ビジョンの浸透」。そのため、子どもの「未来」と「今」両方を幸せにするという視点でポジティブキャンペーンを張る。ポイントは、「みんなが見てみたい未来」と「がんばったら実現できそうな未来」が詰まっていること。無理をせず、やりたい人から取り組み、そこに「一緒に悩んで引き出す」伴走支援を惜しまない。先生たちから「やっていいですか」と聞かれたとき、機を逃さず「どうぞご自由に」と言えるためには、法規や制度に熟知しておくことが重要。
先生たちの力を信じ、トップが自己開示しながら組織を動かし、子どもの学びを変容させていったワクワクが止まらない一冊。
(2530円 教育開発研究所)
(重森 栄理・広島県教育委員会乳幼児教育・生涯学習担当部長(兼)参与)