生徒指導の“ほうれんそう”の仕方 チーム学校から保護者対応まで
14面記事
片山 紀子・吉田 順 編著
「良い・悪い例」挙げ具体的に解説
学校現場ではトラブルが後を絶たない。その多くは、初期対応の不備に起因している。その初期対応において鍵となるのが、表題にもある「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」である。「ほうれんそう」とは、管理職への報告にとどまらず、同僚との情報共有や保護者への連絡など、さまざまな対応を含む。しかし、現行の生徒指導提要には「ほうれんそう」についての明記がない。
本書は、生徒指導の基本中の基本ともいえる「ほうれんそう」の重要性を力強く訴えるものである。新任教員からベテランまで、さまざまな立場の教員の実践例を基に、「悪い例」と「良い例」が比較されており、読者自身が自らの指導を省みるきっかけを得られる。
いじめ対応や保護者とのコミュニケーション、記録の取り方など、学校現場で直面する具体的な場面への対処方法も豊富に盛り込まれている。また、管理職・生徒指導部長(主事)・学年主任といった立場からの組織的な対応の在り方についても網羅されており、学校全体としての連携強化に役立つ構成となっている。
とりわけ、「生徒指導は情報戦である」という筆者の言葉は本質を突いた鋭い指摘であり、「何をもって情報とするのか」「初期情報と最終情報の区別」など、考察に値する示唆が随所にちりばめられている。多くの教員に読んでほしい一冊である。
(2200円 学事出版)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)