海外の学校における卒業記念品~グローバルな発想を取り入れる~
15面記事日本での「卒業記念品」といえば名入れの文房具やノベルティなどが定番だが、海外では文化や教育制度の違いから、記念品の選び方や意味合いも多種多様になっている。ここでは、アメリカ・ヨーロッパ・アジアなどの地域別に、卒業記念品の傾向と特徴を紹介する。
【アメリカ】アイデンティティとキャリアを意識
アメリカで卒業記念品は、「母校愛」や「個人のアイデンティティ」を表すものとして位置付けられている。代表的なのが、卒業年度や学校名、専攻などが刻印された指輪である「クラスリング」だ。卒業生の誇りと絆を象徴するアイテムで、カスタマイズ性が高く、人気がある。MLBやNFLなどのアメリカのメジャースポーツ球団が、ポストシーズンを制した記念に制作するチャンピオンズリングも、この伝統を継承するものであり、選手が誇りとプライドを持てる最高の記念品となっている。
そのほか、キャップ&ガウン(角帽とローブ):卒業式で着用する衣装そのものが記念品となり、写真撮影や家族との記念に残される。
卒業後も日常で使えるロゴ入りグッズ:Tシャツ、パーカー、マグカップ、文具など。
キャリア支援型ギフト:名刺入れ、高級ペン、リクルートスーツなど、社会人生活を意識した実用品が選ばれる傾向も。
【ヨーロッパ】伝統と芸術性を重視
ヨーロッパでは、卒業記念品に文化的・芸術的な意味合いが込められることが多く、形式も国によって異なっているのが特徴だ。
卒業証書の巻物:美しい筆記体で書かれた卒業証書を巻物状にして贈る習慣があり、額装して飾ることもある。
高級文具・革製品:万年筆、レザー手帳、名刺入れなど、長く使える上質なアイテムが好まれる。
体験型ギフト:語学研修やインターンシップなど、卒業後のキャリア形成を支援するプログラムが記念品として提供されることもある。
【アジア】思い出と絆を形にする記念品
アジア圏では、卒業記念品は「仲間との絆」や「思い出の共有」に重点が置かれる傾向にある。
寄せ書き色紙・写真アルバム:中国や韓国では、卒業写真にメッセージを書き込んだ色紙が定番。日本と似た文化が見られる。
制服に別れを告げる儀式:韓国では卒業式後に制服に小麦粉をかけ合う風習があり、記念品というより「体験」が記憶に残る演出となっている。
実用品+感謝のメッセージ:文房具やマグカップに加え、先生や家族への感謝を込めた手紙やカードが添えられることも多い。
【最新トレンド】ICT・サステナブル・グローバル視点
近年では、卒業記念品にも社会的な価値やテクノロジーが反映されるようになっているのも、一つの特徴だ。
①ICT技術を活用した記念品:AR卒業アルバム=写真にスマホをかざすと動画が再生されるなど、思い出をデジタルで残す工夫が進んでいる。NFT卒業証書:ブロックチェーン技術を使った唯一無二のデジタル証書が登場し、未来志向の記念品として注目されている。デジタルフォトフレーム:何千枚もの写真を保存できるアイテムが、紙のアルバムに代わる新定番になりつつある。
②サステナブルな記念品:苗木の植樹プロジェクト=アメリカの大学では、卒業生がキャンパスに木を植える活動が広がっている。フェアトレード商品=ヨーロッパでは、開発途上国の工芸品やオーガニック食品を記念品として選ぶ動きも広がっている。寄付付きギフト=売上の一部が慈善団体に寄付されるアイテムが、卒業生の社会貢献意識を育てる手段になっている。
③国際交流を意識した記念品:姉妹校との記念品交換など、異文化理解を深めるため、海外の学校と記念品を贈り合うプロジェクトが増加している。共同制作の記念品=姉妹校の卒業生がデザインを考案し、メッセージやイラストを共有する取り組みも。
ともすれば定番化、慣習化に陥りやすいのが日本人の悪い癖だ。より意義深く、心に残る記念品選びの一つとして、日本の卒業文化にも、こうしたグローバルな発想を取り入れてみてはどうだろうか。