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幼稚園・保育園・こども園 保護者対応ですべきこと・してはいけないこと110事例

14面記事

書評

嶋崎 政男・操木 豊 編
非認知能力や宗教虐待にも触れ

 以前、中学校よりも小学校、さらに幼・保・こども園と年齢が低くなるほど、クレームが増えるのは、子どもも保護者も成長途上だからだ、という話を聞いたことがある。本書を読むと、まさにその言葉通り、幼・保・こども園における保護者対応の難しさと多様性が浮き彫りになる。
 本書は、実際に現場で起きた事例を基にQ&A形式で構成されており、通園バスの時刻変更要求、教育方針への不満、保育者個人へのクレーム、性的マイノリティーへの配慮など、幅広いテーマが網羅されている。110の事例それぞれに「すべきこと」と「してはいけないこと」が明示されており、読者は具体的かつ実践的な対応の指針を得ることができる。
 特に、保護者対応時の「三つの先」や登園しぶりへの「四つの力」などは、現場での対応に深い示唆を与える。また、随所に挿入されたコラムでは、「非認知能力」「宗教虐待ガイドライン」「HSCと合理的配慮」など、現代的な教育課題にも触れ、読者の理解を一層深めてくれる。
 教育現場における保護者対応は、ときに保育者や教職員の心身を疲弊させるほど複雑で繊細な課題となる。「寄り添う」ことと「毅然とする」ことのバランスは、現場では非常に難しい。本書は、そうした葛藤に真正面から向き合い、現場の声に応える実践的な一冊である。
(2530円 教育開発研究所)
(中村 豊・前公益社団法人日本教育会事務局長)

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