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教員志望学生の不安や悩みをどう理解するか 現代アメリカにおける支援実践から

14面記事

書評

太田 知実 著
考えを肯定する試みなど紹介

 本年度も、全国の自治体で教員採用試験が行われた。周知の通り、教員採用倍率は低調で採用者数は増加傾向だが受験者数は減少。教員養成大学卒業後、教員を志望しない学生も増えている。教員を取り巻く労働環境の厳しさもあり、教員不足、教育の質の低下が問題視され、教員養成は国の将来を左右するといっても過言ではない課題に。
 そのような背景を受け、本書は教員志望の学生や若い教員の悩み、不安に丁寧に向き合う方途を研究報告する。教員離れが加速している現代アメリカの教員養成の動向を手掛かりに研究を進める。その動向とは、教員養成担当者が、学生の不安や悩みに対し理解を深め支援的・ケア的に関わっていくもの。これまでは学生の主体性や努力不足を起因としがちだったが、学生の潜在能力を引き出し、学生の思い・考えを聞き取り肯定的に理解して支援することや地域で学ぶことを重視し、地域住民や保護者による学生支援の取り組みを詳細に紹介。
 著者も述べている通り、日米の教員養成の相違点は当然存在し、単純な比較や安易な示唆獲得には至らないだろう。アメリカの教員養成の背景には人種による認識修正という命題が存在している。とはいえ教員養成の場を、大学はじめ地域や保護者に広げ「空間」として捉えていく研究は興味深く、日本の教員不足や教員養成の問題を考える上で一助となる一冊である。
(3740円 学文社)
(藤本鈴香・大谷大学教職アドバイザー)

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