日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

集団で言葉を学ぶ/集団の言葉を学ぶ

12面記事

書評

石田 喜美 編
豊かな読書文化の探求を提案

 本書は、日本の学校では、教室内で使用される言語や急速に変化する社会・文化的価値を「当たり前」に共有できない多様な多くの子どもが存在する中、令和3年の中央教育審議会答申以降、集団の負の側面が過剰に強調され、負の側面を避けることばかりに注意が向けられていることに警鐘を鳴らす。そして、集団の多層性を視野に置きながら、言葉やリテラシーの学びと集団とが不可分であることを読者に提示している。
 また、全3部9章から成っているが、評者が多くの示唆を得たのは第Ⅱ部である。「読むことの学び」に焦点を当て、「読むこと」や読書の「当たり前」を問い直し、より包摂的で豊かな読書文化を探求していくことを提案する。
 特に、第5章「個―集団の読みを変革する―文学の授業におけるクィアな読みの実践」では、高校国語科の授業において、現代社会の課題を扱う文学作品を取り上げ、集団で読むことによってのみ得られる多様なリソースを獲得し、それによって個の読みも進化することを示している。全国学校図書館協議会が毎年実施している「学校読書調査」の結果を見ると、高校では、1カ月の読書量は10年平均で1・5冊、不読者率(1カ月読書冊数0冊)は50%を超えている。この授業が提案するように、集団で読むことの重要性を再認識した実践を工夫していけば、高校生の読書意欲は改善する可能性が大きいと信じる。
(3080円 ひつじ書房)
(新藤 久典・元国立音楽大学教授)

書評

連載