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平成時代における高校生の進路選択 トラッキングの“弛緩”に関する実証的研究

14面記事

書評

中西 啓喜 著
「階層構造」変化で生じた影響

 日本の高校への入学は、長らく「輪切り選抜」などによって、その進路先が決定されてきた。その結果、高校の「階層構造」化が進み、「日本の教育的不平等を生成するシステムとして機能してきた」と、教育社会学の世界では認知されている。
 強固だった「階層構造」が平成時代の生徒数の急増・急減、職業学科から専門学科への呼称変更(平成7年)、総合学科の誕生(同6年)でどう変わったか。所属の高校という「トラック(走路)」は、その先の進路選択に大きな影響を与えてきたが、「階層構造」の変化により「トラッキングの“弛緩”」が生じ、高校生の学習や進路指導に影響を及ぼしたのではないかという問題意識を実証的に研究した。
 先行研究を踏まえ、「教育的不平等生成の理論的整理」(第1章)から、「高校教育における選抜機関から支援機関へのシフト仮説の検証」(第4章)や「少子化に伴うトップ高校の変化」(第5章)、商業科を中心にした「職業系専門高校の変遷と現状」(第7章)、「農業高校は農業者育成機関としての役割を終えたのか?」(第8章)など、今の高校教育につながる知見を示した。その際、小・中・高校生パネルデータや、「繰り返し調査」結果などを駆使した。
 また、補論として掲載する「国立大学は推薦・AO入試によって『成績優秀な学生』を獲得できているのか?」なども「トラッキングの“弛緩”」の観点から、解き明かされ興味深い。
(4950円 ミネルヴァ書房)
(矢)

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