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それゆけ文科若手官僚! 地方と一緒に教育改革の種をまく

16面記事

書評

千々布 敏弥 編
風穴を開ける出向者たち

 文科省の職員が毎年度一定数、都道府県や政令指定都市、市などの教育委員会事務局に幹部として出向する。若手官僚に地方の教育の実態を学ぶ機会を提供するとともに、首長からの要請、あるいは当該地で発生した課題への対応など、送り手と受け手がウィンウィンの関係にあるということだろう。
 編者が、出向経験があり、中学校長経験者としても知られる浅田和伸・長崎県立大学長(当時は教育再生実行会議担当室長)に相談し、小川正人・東京大学名誉教授(当時は放送大学教授)を顧問格に省内に生まれた、出向者らの学びの場「地方教育行政研究会」が母体になっているのが本書。
 平成18年から令和5年の間に地方に出向した16人が「県だけでは思い付かない新たな発想で教育行政システムを改革した話」(第2章)と「圧倒的な熱量で教育委員会の仕事の仕方や学校の意識を変えた話」(第3章)に執筆した。
 単なる昔話、手柄話として読んでも面白いが、出向者たちが強い使命感や斬新なアイデアなどで教育界に風穴を開けていくさまは痛快でもある。同時に、当該地の教員などの教育のプロと教育行政のプロがタッグを組むと、教育がこんなに活性化する可能性があることに、改めて気付かされる。
 地方自治体に独自に専門性の高い教育行政官を育成していく機運を高め、仕組みづくりを醸成することも、教育行政を担当する国としての責務ではないだろうか。
(1980円 悠光堂)
(矢)

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