高校教育は次の段階へ N-E.X.T.ハイスクールとDXで切り拓く、多様な学びの未来
11面記事補正予算3千億円に込められた国の強いメッセージ
ネクストハイスクール構想とは
文科省は、2025年度補正予算案において、高等学校教育改革の推進に総額3009億円を計上した。内訳は、「ネクストハイスクール構想」に2955億円、「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」に52億円、「国際交流・留学プログラム構築推進事業」に2億円である。これは、急速な社会変化の中で、高校教育に求められる役割が大きく転換することを踏まえた、極めて重点的な投資であるといえる。
中核となるのが、N-E.X.T.(ネクスト)ハイスクール構想だ。2040年には、産業構造や社会システムの変化を踏まえた労働⼒需給ギャップにより、地域の経済社会を⽀えるエッセンシャルワーカーの圧倒的不⾜、いわゆる理系⼈材の不⾜が懸念されるところであり、産業イノベーション⼈材の育成が重要。また、少⼦⾼齢化、⽣産年齢⼈⼝の減少、地⽅の過疎化が⼀層深刻化し、地理的アクセスを踏まえた多様な学びの確保が重要となる。
そこで、高校教育の在り方そのものを刷新することを目的に、先導的な取り組みを行う高校を拠点としてパイロットケースを創出し、その成果を全国に普及させることを目指す。
理系⼈材育成へ、複数年度にわたる財源を確保
特徴は、各都道府県には基金を設置すること。高校教育改革は、カリキュラム変更、人材育成、地域連携の構築など、数年単位で成果が現れる取り組みである。しかし、通常の単年度予算では、「毎年の予算確保に左右される」「中長期計画を立てにくい」「担当者異動で取組が途切れやすい」といった課題があった。このため、基金化することで、複数年度(支援期間は3年を予定)にわたる安定的な財源を確保し、腰を据えた改革を可能にすることが最大のねらいである。
同構想は3つの類型から成る。1つ目は「アドバンスト・エッセンシャルワーカー等の育成支援」。医療・福祉、インフラ、産業現場など、地域社会を支える高度専門人材の育成を見据え、産業界や自治体と連携した実践的な学びを強化する。少子高齢化や地域の担い手不足が深刻化する中で、高校段階から地域課題と向き合う教育の重要性が高まっていることを反映した。
2つ目は「理数系人材育成支援」。探究的な学習や高度な理数教育を通じて、科学技術立国を支える人材の裾野を広げることをねらう。大学や研究機関との連携、先端設備の活用などを通じて、従来の教科枠を超えた学びが想定されている。理数系教育の充実は、特定の進学校だけの課題ではなく、幅広い高校において求められる基盤整備である点が強調されている。
3つ目は「多様な学習ニーズに対応した教育機会の確保」。不登校経験者、発達特性のある生徒、外国にルーツを持つ生徒など、多様な背景を持つ若者が学び続けられる環境整備を進める。通信制・定時制の知見やICTを活用した柔軟な学習形態の導入など、包摂的な高校教育モデルの構築が期待されている。高校進学率がほぼ100%に達した今、「誰一人取り残さない」視点が高校教育改革の中心課題となっていることを示すものだ。
「DXハイスクール」も継続
これらを補完する施策として位置付けられているのが、「DXハイスクール」になる。52億円という規模ながら、学習データの活用、ICT環境の高度化、校務の効率化などを通じて、教育の質と持続可能性を高める役割を担う。単なるデジタル化ではなく、探究学習や個別最適な学びを支える基盤としてDXを位置付けている点に意義がある。教員の働き方改革と教育活動の高度化を両立させる視点も欠かせない。
さらに、2億円が計上された「国際交流・留学プログラム構築推進事業」は、高校段階での国際的な学びの機会を広げるねらいを持つ。オンライン交流や短期留学を含め、多様な形で海外とつながる経験は、生徒の視野を広げるとともに、主体的に学ぶ動機付けにもなる。国内改革と国際的視点の双方を重視する姿勢がうかがえる。
高校教育を「次の社会をつくるための基盤」に
今回の補正予算は、高校教育を「次の社会をつくるための基盤」として再定義する試みになる。学校現場にとっては、従来の枠組みにとらわれず、自校の強みや地域性を生かした教育構想を描くことが一層求められる。一方で、改革を現場任せにせず、制度面・財政面から後押しする国の姿勢は明確である。「ネクストハイスクール構想」をはじめとする今回の施策が、全国の高校教育の底上げにつながるかどうかは、今後の運用と成果の共有にかかっている。

