学校体育館 断熱改修と併せた空調整備を推進~2033年までの「空調設備整備臨時特例交付金」を活用~
18面記事
老朽化した体育館には、断熱改修とセットにした空調整備が求められている
整備費用2分の1に加え、光熱費も支援
老朽化した校舎と同様に、暑さ・寒さ対策が喫緊の課題となっているのが体育館や武道場などの屋内運動場だ。特に体育館は、体育や行事、部活動の場であると同時に、災害時には地域の避難所として機能する重要な施設であるため、断熱性能の確保と空調設備の整備は不可欠だ。しかし、大半の体育館は十分な断熱性能を持たないまま建設されており、夏は酷暑、冬は底冷えする空間となっているのが実情である。
こうした状況を背景に、近年では体育館への空調設備整備が全国的に進められている。ただし、空調機器を単に設置するだけでは、消費電力が大きくなり、光熱費の増大や十分な効果が得られない。そこで重要となるのが、断熱改修を前提とした空調整備という考え方だ。
その中で、いまだ約2割にとどまる体育館の空調整備を強力に後押ししているのが、文科省が2024年に創設した「空調設備整備臨時特例交付金」になる。この交付金は、避難所に指定されている公立小中学校の体育館などに空調を新設する際、国が整備費用の2分の1を支援するもので、断熱性確保を要件とし、2033年度までの10年間実施される。
しかも、従来の空調整備に比べ、補助対象となる空調単価が約1・5倍(3・5万円/平方m前後→5・3万円/平方m前後)に引き上げられた。これにより、大空間である体育館に適した高性能な空調設備の導入が現実的となった。加えて、空調工事と断熱性確保工事のいずれも、2カ年度以上にまたがって工事を行うことができる。例えば、初年度に前払金の支払いのみを行う場合や年度毎に工事の進捗に応じた支払いを行う場合も補助対象となるなど、自治体の事業計画に柔軟性を持たせた制度設計となっている。
さらに、2025年度からは、体育館空調にかかる光熱費への普通交付税措置(国からの財政支援)も開始。自治体のランニングコスト負担が軽減されることで、全国的な整備加速が期待されている。これは、避難所機能強化のため体育館空調整備を促進する一環で、「空調設備整備臨時特例交付金」(設置費補助)に加えて、運用面での支援を強化するものになる。
断熱性確保で、年間の光熱費が半減
施設規模や運用条件によって変動する可能性もあるが、文科省が示した試算によれば、空調装置を設置する際に断熱性を高めた体育館と、断熱なしで空調を設置した場合を比較すると、年間の電気代が次のように変わるとされている。
断熱性なし(一般的な体育館):年間約280万円の電気代。断熱性を確保した体育館:年間約140万円の電気代。
すなわち、年間で約50%の光熱費削減効果が期待できるという試算である。これにより、長期的な運用コストが相当程度抑えられることがわかる。しかも、断熱改修の初期投資費用を含めても、長期的には総コストが大幅に低減する可能性があるとされている。
このように、断熱改修+空調整備は、快適性向上だけでなく、自治体・学校のランニングコスト削減にもつながる点が重要であり、財政面・環境面の双方でメリットが見込まれる。
補助金を活用するために必要な整理事項
空間面積の大きい体育館に空調を整備するには多大なコストがかかる。したがって、これまで財政に余裕のない自治体が手を出しにくかった経緯があり、東京都では9割近く導入済みの一方で、全国的には地域格差が広がる状況を招いていた。
こうした中で、自治体での空調整備を促進する「空調設備整備臨時特例交付金」をはじめとする国の補助制度を活用するためには、事前の計画整理が不可欠である。まず重要となるのが、体育館の現状把握。築年数や構造、屋根・外壁・開口部の断熱性能、既存設備の状況などを調査し、課題を明確にする必要がある。
次に、断熱改修と空調整備を一体的に捉えた整備方針を示すことが求められる。断熱性能を向上させることで空調効率が高まり、エネルギー消費量や光熱費を抑制できる点を、計画書の中で論理的に説明することが重要だ。また、災害時の避難所利用を想定した運用計画や、地域住民の安全確保への寄与といった観点も、事業の意義を高める要素となる。
体育館の断熱化を図る具体的手法
体育館の断熱改修には、屋根や外壁への断熱材追加、天井への断熱施工などがある。特に屋根は、夏季の日射熱の影響を強く受けるため、高性能グラスウール断熱材など遮熱性・断熱性の高い材料を用いることで、室内温度の上昇を抑える効果が期待できる。
加えて重要なのが、開口部の断熱性能向上である。多くの体育館では単板ガラスの大開口窓が採用されているが、これを複合ガラス(複層ガラス)へ更新することで、外気温の影響を大幅に低減できる。こうした断熱改修を施した上で空調設備を導入することで、少ないエネルギーで快適な環境を維持することが可能となる。
断熱と空調の一体整備がもたらす効果
断熱改修を前提とした空調整備は、児童生徒の学習・運動環境を改善するだけでなく、熱中症対策や冬季の健康管理にも寄与する。また、災害時には長時間滞在を想定した避難所としての機能が大きく向上する。さらに、ランニングコストの削減やCO2排出量の抑制といった面でも効果が期待でき、持続可能な学校施設運営につながる。
体育館の空調と断熱を「別々の工事」として捉えるのではなく、一体的な環境改善として進めることが、これからの学校施設整備の鍵である。文科省の支援制度を的確に活用し、計画的に整備を進めることが、学習環境と防災機能の両立を実現する近道となる。

