10代から考えるこころの健康 みんなでつくる「だいじょうぶな社会」
14面記事
笠井 清登 著
疾患経験者、支援者らの声紹介
学習指導要領の改訂により、2022年度から高校の保健体育で、こころの健康や精神疾患に関する内容が追加された。これにより「精神疾患の予防と回復」の項目は、約40年ぶりの復活となった。教科書には、限られた紙幅のうちに知識のエッセンスが凝縮されており、その記述を読んでいるだけでは、教師にとっても生徒にとっても精神疾患の実態をつかむことが困難である。本書では、精神疾患の体験を有する当事者、家族、支援者など11人の方々の生の声がインタビュー形式で掲載されている。どの章でも、個別的でありながら極めて普遍的な問題が扱われており、当事者の語りに耳を傾けるならば、他人ごととして片付けることはできないだろう。各章末では、インタビュー内容を参照しつつ、著者による丁寧な解説が付されており、「急速冷凍」された教科書の用語が体験者の語りに基づいて解凍・翻訳される巧みな構成となっている。
サブタイトルにもある通り、本書は「精神疾患になってもだいじょうぶな社会」を目指している。決して「誰一人として精神疾患を発症することがない社会」ではない。精神疾患になっても、社会とのつながりの中で回復やウェルビーイングを目指せるよう備えておくことこそが真の予防なのである。本書は、教科書の精神疾患に関する項目の奥行きを正しく理解するための格好の副読本となるだろう。
(1980円 大修館書店)
(井藤 元・東京理科大学教授)

