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人はなぜ★5より★2のレビューが気になるのか 「なんとなく」の心理を科学する・上

19面記事

書評

松井 亮太 著 中村 結衣 マンガ・イラスト 森屋 紫苑 図版作成
授業再考の一助となる知見も

 本書は、近年、世界的に注目されている行動意思決定論の入門書である。行動意思決定論とは、人がどのように意思決定を行うのか、その特性を実験的に明らかにしようとする心理学的アプローチの学問である。タイトルにもなっている問いをはじめ、「なぜダメ男と別れられないのか」といった人間味あふれる心理や「バスを待っていると目的地とは異なるバスばかりが来るのは不運の証拠なのか」といった日常的な疑問まで、扱われるテーマはいずれも身近な「あるある」である。
 しかも平易な言葉で漫画やイラスト、図版を交えて解説が行われており、非常に読みやすい。特筆すべきは、その親しみやすさと学術的誠実さの両立である。一見、手軽な入門書の装いだが、巻末の膨大な引用文献を見れば、本書がいかに多くの先行研究に裏打ちされているかが分かる。本書は幅広いターゲットに向けて書かれたものであるが、教育関係者も、日々の実践に直結する示唆が得られるだろう。「ユーモアは記憶の定着率を高める」「情報が多すぎると理解できない(情報オーバーロード)」といった知見は、授業構成を再考する一助となる。特に、スマホを使用していなくても自分のそばにスマホがあるだけで記憶力や情報処理能力が低下するという指摘は、ICT活用の進む現代の学習環境を考える上で極めて重要な視点だ。ぜひ一読をお勧めしたい。
(1980円 旬報社)
(井藤 元・東京理科大学教授)

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