教育格差是正政策の日中比較 教員確保・学校存続・教育機会保障
14面記事
横井 敏郎・厳 平・潘 昆峰・張 揚 編著
共通の課題 地道な研究基に論ず
かつては教育学の研究室を希望する中国人留学生の興味・関心は日本の経済成長の秘密を学校教育システムの中に探ろうとするものが多く見られたが、経済力も逆転した今は皆無である。変わって近年では地域間・学校間の格差を平準化させる定期人事異動、離島・へき地の小規模校を維持・活性化させる取り組みなど日本の教育システムを参照することによって、中国における都市部と農村の社会格差という難題を解消したいとする希望が増えている。
本書はサブタイトルにみられる「教員確保・学校存続・教育機会保障」という日中両国が直面する課題=教育格差・不平等・条件整備不足の解消について、フィールドに根差して地道な研究を進めている北大と中国人民大学の教育学者が国際交流の中で骨太にまとめ上げた学術専門書である。日本に関する論考7本、中国に関する論考7本とバランスも取れており、両国が垂直的な関係から水平的な関係となった現在、むしろ日本側が中国の挑戦的な政策に学ぶべき内容も多く描かれている。
これまで日本で紹介される中国の教育政策といえば、宿題と塾という二つの負担を軽減する「双減政策」など、応試教育を脱却する全人格的な素質教育への動向等であり、教育格差是正に焦点を絞った本書は類を見ない。
政治的に不安定な中でも学術交流を継続して成果を出した両大に敬意を表したい。
(6930円 北海道大学出版会)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

