見えない妻 聴こえない夫 ふたつの世界で目指す金メダル
14面記事
篠原 通良 著
生きざまから学ぶ点多く
高田千明さんは全盲で東京2020パラリンピックなどに出場した走り幅跳び日本記録保持者。高田裕士さんはろう者で東京2025デフリンピックなどに出場した400メートルハードル日本記録保持者。共にプロ陸上競技選手の2人は夫妻で、息子との3人家族だ。
金メダルを目指して挑戦を続ける2人の足跡や生活を描くノンフィクションである。
彼らの生きざまや社会の在り方、障害についての理解など、学ぶこと、はっとさせられることも多い。例えば、聴覚障害者にとって「社会生活では、口で話すことよりも、頭で理解することのほうがよっぽど大切」「大事なのは『スピーキング』よりも『リーディング』」といった医師の言葉も重く響く。
千明さんや、全盲で初めて京都大学に入学した広瀬浩二郎さんが、小学校時代に通った通級指導学級での担任(同じ人)を今も慕っている様子からは、教師との出会いが、子どものその後の人生にとって、いかに大きな光、希望となるかを実感する。教師はまさにそういう職なのだ。
この他、歩道や駅などで広く使われている点字ブロックや、デフリンピックなどの陸上競技で音の代わりに光(色の変化)でスタートのタイミングを知らせる箱型ランプが、どちらも日本人の考案・開発したものだということも、多くの人に知ってほしいと感じた。
ものの見方が確実に広がる一冊である。
(2200円 中央公論新社)
(浅田 和伸・長崎県立大学学長)

