多様性と気候変動に対応する新時代の学生服とスポーツウエア
12面記事
スエットやマウンテンパーカーなど「制服のカジュアル化」が進む
「四季を前提とした制服」や「画一的な運動着」からの脱却
近年、サステナブルな社会づくりや多様性への理解が進む中で、「学校制服」は子ども一人ひとりの個性や価値観を尊重しながら、学校の理念や特色を表現することが求められるようになっている。その流れの中で、動きやすさや快適性を重視した「制服のカジュアル化」が進むとともに、猛暑対策や高機能素材を活用したセットアップなど、制服まわりも含めた幅広いアイテムの提案が不可欠になっている。こうした動きは「スポーツウエア」にも広がっており、学校生活全般での着用を想定したライセンスブランドや自社ブランドの展開が加速している。ここでは、そんな多様性と気候変動に対応した新時代の学生服とスポーツウエアの最新動向を取り上げる。
「多様性」への対応が生み出す新しい制服像
従来の男女別にデザインが固定された学校制服は、性自認やジェンダー表現の多様化が進む現代の価値観にそぐわなくなっている。こうした流れを受け、全国の中学・高校ではスラックス・スカートの自由選択制、ネクタイやリボンの付け替え可能なデザインなど「ジェンダーレス制服」への移行が広がっている。すなわち、これからの学校制服は単なる「標準服」を超えて、子どもたち一人ひとりの個性や価値観を尊重する「自己表現の場」へと進化を遂げていく必要があるのだ。
また、制服のデザインだけでなく、サイズ展開や着心地への配慮も重視されるようになった。特に、成長期の生徒にとって窮屈な制服はストレスの原因となる。ストレッチ素材や吸湿速乾素材を活用した「動ける制服」は、学習や登下校などを含め、学校生活全般にわたって快適さを提供し、心理的な安心感にもつながっている。
「気候変動」に対応する素材と機能性
もう一つの大きな潮流が、気候変動への対応だ。夏の猛暑、冬の暖冬という従来の「四季の前提」が崩れる中、制服メーカーは素材や仕様の抜本的な見直しを進めている。夏服では、ノーネクタイ・ノーリボンで熱中症リスクを軽減するとともに、通気性・吸汗速乾性に優れたポロシャツ、Tシャツ、ハーフパンツなどが選ばれる傾向が強まっている。その中で、シャツの裾をズボンに入れないことで風通しを良くする工夫も取り入れられるようになっているほか、制服以外の通学時アイテムとして日傘やアームカバー、ネッククーラーといった猛暑対策も年々進んでいる。
一方、暖冬化により、「指定コートのみ」から「市販品OK(色・デザイン制限あり)」に緩和する学校も増加。こうした状況を受けて制服メーカーも、従来の重いウールコートから、軽量で機能的なスエットやマウンテンパーカー、スタジアムジャンパーなど、より着回しがしやすいアイテムを提案するようになっている。これらは、気候変動が進む中での快適な学校生活を支える“新時代の防寒対策”といえるものだが、今後は地域ごとの気候に応じた防寒着の選択がより一層求められていくに違いない。
また、環境負荷の低減に寄与するため、リサイクルポリエステルや植物由来繊維など、サステナブル素材を積極的に採用するメーカーも増えている。しかも、着用後の制服を再資源化するリサイクルスキームを構築する制服メーカーもあり、教育現場と連携した循環型モデルの構築が期待されている。
制服もカジュアル化へシフト
制服のデザイン面でも、「フォーマル」から「カジュアル」へのシフトが顕著になっている。従来の制服は「フォーマルで画一的な装い」として、学校の規律や伝統を象徴してきたが、現在では「多様性と実用性を重視した服装」へと移行しつつあるからだ。
例えば、生徒が自分らしく快適に過ごせる環境づくりとして、ブレザーとネクタイ・リボンの組み合わせだけでなく、ポロシャツやカーディガンなどを標準アイテムに取り入れ、気候や個性に合わせた多様な着こなしを可能にする学校も増えている。
また、最近では、生徒主体のデザイン投票や意見募集を行う学校も現れ、制服が“学校の顔”として生徒と共に作り上げられるようになっている。こうした取り組みは生徒たちの自律性を促し、学校ブランドの再構築にもつながるものだ。
制服の価格高騰も、カジュアル化に拍車をかける要因の一つとなっている。ユニクロなどの量販店の既製品を制服として認める学校も増えており、家庭の経済的負担を軽減する工夫がなされている。
学校制服のカジュアル化は、単なる服装の変化にとどまらず、教育現場における多様性・快適性・安全性の向上を象徴する動きである。今後は、地域の気候や文化、学校の教育方針に応じた柔軟な制服制度の設計が求められるだろう。制服は「着る教育環境」として、より生徒中心の視点で進化していくことが期待されている。
スポーツウエアにも広がる多様性と機能性

学校生活全般で着用できるスポーツウエアへ
制服と同様に、学校の運動着=スポーツウエアも大きく変化している。これまでの「体操服」は画一的なスタイルが主流であったが、現在では機能性・快適性を重視した設計へと移行。通気性に優れた素材、UVカット機能、汗を素早く乾かす吸湿速乾素材など、プロスポーツウエアに匹敵する機能を備えたアイテムが増加している。加えて、ジェンダー・多様性に配慮したサイズ展開や選べるシルエット、カラーアクセントやニュアンスカラーを取り入れたデザイン性の高い製品も登場している。
さらに、運動着の用途が「体育の時間」だけでなく、通学や授業中など学校生活全般で着用できる「アクティブウエア」としての需要が高まっていることも大きい。したがって、制服メーカー各社は、トップアスリート向けに培われた素材・設計技術を学校用ウエアに応用するため、スポーツウエアブランドとのライセンス提携を強化。加えて、学校ニーズへの柔軟な対応や制服と統一感のあるデザインが可能な、自社ブランドによるスポーツウエアの開発にも力を注ぐようになっている。
また、気象の変化はここでも影響しており、猛暑下での実習を伴う職業高校向けに電動ファン付きウエアの販売を開始したメーカーも現れている。夏のような暑さが1年のほぼ半分を占めるようになる中で、日常と教育現場をつなぐ新しいカテゴリが必要となる時代を迎えているといえるだろう。
制服・体操服のフリマサービスも
多様化するニーズに応えるためには、制服メーカー側の生産・流通体制の変革も不可欠である。従来の大量生産・大量在庫モデルから、多品種・小ロットへの転換が求められており、AIによる需要予測やオンライン採寸システムの導入など、DXの取り組みが加速している。
特に、AI採寸や3Dシミュレーションを活用したオンライン試着サービスは、地域を問わず生徒が安心して購入できる仕組みとして注目を集めている。また、学校単位での在庫管理や再利用を支援するデジタルプラットフォームの構築も進み、効率的かつ持続可能な運用が可能になりつつある。
加えて、制服のリユースやリサイクルなど、教育現場の課題解決に寄り添うサービス展開も広がっている。使用済み制服の回収・再販売、修繕支援などを通じて、家庭負担の軽減や地域循環型の仕組みづくりに貢献する事例も見られる。
その中では、同じ学校の保護者同士が制服・体操服を売買できるフリマサービスを、全国の学校に向けて本格的に展開する制服メーカーも現れている。プライバシーが守れる匿名取引によりスマートフォンやパソコンから簡単に出品・購入が可能で、学校・保護者が安心して利用できるサービスになっているのが特徴だ。こうした動きは、「チーム学校」の一員として企業が教育現場に寄り添う姿勢を象徴している。
これからの学校衣料に求められる視点
学校制服やスポーツウエアのあり方を見直すことは、単なる衣服選定にとどまらず、教育の本質に関わる課題でもある。多様性を尊重する学校文化の醸成、環境問題への意識啓発、そして快適な学びの場づくり、そのすべてに直結するテーマとなっている。
そうした意味でも、今後、全国の学校が制服のモデルチェンジや運動着のアップデートを検討する際には、「誰もが安心して着られること」「環境への配慮」「学校理念との調和」という3つの視点がカギとなっていくに違いない。

