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高校基礎学力テスト、31年度試行

10面記事

高校

「高大接続システム改革会議」最終報告 中
高校教育改革
アクティブ・ラーニングで指導改善

 高大接続システム改革実現のために不可欠なのは、高校教育改革。「高等学校基礎学力テスト」(仮称)が検討されている他、教育課程の見直し、アクティブ・ラーニング(AL)の視点からの「学習・指導方法の改善」、指導要録の改善など「多面的な評価」の推進など、具体的な改革方策がめじろ押しだ。今回は、高大接続システム改革会議(座長=安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長、文部科学省顧問)の「最終報告」(平成28年3月31日)が提案した高校教育改革の内容を見る=改革スケジュールは図参照。

高校基礎学力テスト
授業改善へPDCAサイクル構築

 平成31年度に試行実施がスタートする「高等学校基礎学力テスト」(仮称、以下、高校基礎学力テスト)は、基礎学力定着の度合いを把握するとともに、教育目標の設定、教育課程の編成、指導計画の作成・見直しから生徒の指導改善へと至る高校教育の質の確保・向上のためのPDCAサイクルの確立を促すことを狙いの一つにしている。
 34年度までは、高校基礎学力テスト結果を大学入試や就職などに用いないことから「試行期間」と位置付けた。
 35年度以降については、試行期間での定着状況を勘案しながら、大学入試や就職への活用を探っていくとしている。
 高校基礎学力テストでの対象は「学校または設置者の判断により学校単位で受検することを基本とし、学校を経由しない個人単位での受検も可能」とした。受検の時期や回数については「学年や時期、教科・科目等に関し、学校または設置者において適切に判断できる仕組みとする」。
 対象・教科は全ての生徒が履修する範囲を上限として、国語、数学、英語で実施するとし、「国語総合」「数学I」「コミュニケーション英語I」を示し、「出題範囲の中に義務教育段階の内容も一部含める」と基礎学力定着を重視する。
 次期学習指導要領が実施される段階に、地理歴史、公民、理科などを追加導入するとし、現在想定する次期学習指導要領の下で学ぶ生徒が2年になる35年度実施予定。
 問題の内容は、基礎的な「知識・技能」を問うものを中心にしつつ、「思考力・判断力・表現力」を問うものをバランスよく出題するとした。
 コンピュータを活用した試験、いわゆる「CBTの導入」については、今後の検討課題とし「実現可能性も考慮し、紙によるテスト実施も念頭に置きつつ検討する」と記述した。

高校教育改革

多面的評価の充実
指導要録の改善で後押し

 高校段階での学習活動、学習成果を適切に評価する仕組みを構築するなど、「最終報告」では「多面的な評価の充実」を求めた。
 多面的な評価を充実することで、基礎学力などの定着状況を把握し、生徒への指導改善や教材研究に反映させる、あるいは、大学などへの進学時や就職に際して学習履歴、学習成果の証明に活用、高校と大学をつないだ接続のための活用―などを想定した。
 評価の在り方では、学習指導要領に示された各教科・科目の目標に基づいて各学校が設定する指導上の目標に照らして評価する「目標に準拠した評価」の適切な実施を求めるとともに、十分に定着していない観点別学習状況の評価推進の必要性を指摘した。
 多様な学習活動の評価の在り方にも触れ、多様な学習成果を測定するツールの充実を図るため、英検、TOEFLなどの各種民間検定、農業、工業、商業などの校長会が実施する検定試験、高校基礎学力テストなどの普及促進、導入などを求めた。
 同時に、教科外・学校外など多様な学習活動などの評価も含め、多面的な評価が適切に記録として蓄積されるよう、指導要録の改善の検討についても言及している。
 また、各大学の入学者選抜改革などを視野に、「評価の妥当性や信頼性の向上」にも言及し、例えば「指導要録等に記載される評価の妥当性や信頼性を高めていくためには、総括的な評価(評定)に至るまでに、どのような形成的評価を積み重ねてきたのか、どのような目標を設定し、どのような点を重視した評価なのか等を記載内容と対応させていくことが重要」と注意を促した。

次期学習指導要領
教科・科目、抜本的に検討

 「何を教えるか」という知識の質、量の改善だけでなく、「どのように学ぶか」学びの質の深まりを重視した学習・指導方法の改善、「何が身に付いたか」学びの過程を含めた多様な学習成果についての評価の充実を一体的に推進することが、今回の高校教育改革に求められている。
 このうち、「何を教えるか」については、教育課程の見直しが進み、中央教育審議会の検討内容を引きながら、国語科、地理歴史科、公民科、外国語科、情報科では「各科目の内容のみならず、共通必履修科目の設置や科目構成の見直しなど、抜本的な検討を行う」ことが示されている。
 例えば、「世界史」必修の見直しや、歴史の諸相を近現代中心に学ぶ「歴史総合」(仮称)、持続可能な社会づくりに必要な地理的な見方考え方を育む「地理総合」(仮称)、主体的な社会参画に必要な力を人間としての在り方生き方の考察と関わらせながら、公民科(共通)の必履修科目として科目「公共」(仮称)などの設置を提案する。
 理数教育では、選択科目の一つとして、数学と理科の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動に取り組む「数理探究」(仮称)の新設も予定されている。

教員改革
ALの推進へ指導力を向上

 「最終報告」では、知識・技能に加え、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」を求め、思考力・判断力・表現力、人間性や学びに向かう力など情意・態度に関するものも総合的に育んでいく必要性を指摘している。
 そのため、課題の発見・解決に向け、生徒が主体的・協働的に学ぶ、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善を求めた。
 従来の知識・技能伝達型中心の授業からの転換も実現するため、教員の養成・採用・研修各段階での抜本的改革について、中央教育審議会の27年12月の答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」の提言内容を、「最終報告」では紹介した。
 教員のキャリアに応じた能力の明確化の必要性から、教育委員会と大学などとの協議・調整のための「教員育成協議会」(仮称)の設置と「教員育成指標」の全国的整備をうたう一方、養成段階でのアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善など新課題に対応した科目の設定、学校現場体験による実践力の育成および適性確認などを、研修でも同様にアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善など新課題に対応した内容の実施などを提言した。
 こうした取り組みを実現するため、校内研修体制の整備、教育委員会と大学との連携・協力体制の構築、独立行政法人教員研修センターの機能強化、教職大学院での履修証明制度の活用による教員の資質能力の高度化、研修機会の確保やアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善などに必要な教職員定数の拡充などによって、基盤の整備を図るとした。

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