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根拠に基づき論述する力を測る

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共通テスト 国語・記述式問題
大学入試改革 (2)

 文科省が公表した「高大接続改革の進捗状況について」(5月16日)のうち、「大学入学共通テスト」(仮称)の実施方針案には、改革の目玉ともなっている「記述式問題」に関する提案が盛り込まれている。国語、数学で出題されることになるが、評価すべき能力や、問題類型、出題・採点方法などを示した。共通テストの「実施方針策定に当たっての考え方」(案)などから紹介し、(独)大学入試センターが提供した記述式問題の「モデル問題例」なども併せて掲載する。今回は「国語」編。

図表など含む複数の情報を統合、構造化し考えまとめる

 「国語」での記述式問題の出題範囲は、高校での共通必履修科目として設定され、導入の意義が大きい「国語総合」の内容とする、としている。ただし「古文・漢文の原文の内容を把握したり解釈したりする出題は除く」。
 同センターが実施する場合には「文字数80〜120字程度の問題を含め3問程度」「マークシート式問題と記述式問題の大問は分けて出題」「試験時間はマークシート式と合わせて100分程度」などを想定した。
 「国語総合」は、言語活動の充実を求める現行学習指導要領にあって、中核的な科目に位置付く。
 「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」で構成し、指導のための言語活動例などを示す。
 例えば、「状況に応じた話題を選んでスピーチしたり、資料に基づいて説明したりすること」(話すこと・聞くこと)、「出典を明示して文章や図表などを引用し、説明や意見などを書くこと」(書くこと)、「現代の社会生活で必要とされている実用的な文章を読んで内容を理解し、自分の考えをもって話し合うこと」(読むこと)など、指導のための具体的活動を列挙している。
 こうしたことから、記述式問題「国語」では「評価すべき能力」を「多様な文章や図表などをもとに、複数の情報を統合し構造化して考えをまとめたり、その過程や結果について、相手が正確に理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力等を評価する」としている。
 高大接続システム改革会議の最終報告、中央教育審議会で検討した「言語能力を構成する資質・能力が働く思考の過程」などを踏まえ、作問検討チームが過去の大学入試問題、高校入試問題を分類したところ、(1)テクストの部分を把握、精査・解釈して解答する問題(2)テクストの全体を把握、精査・解釈して解答する問題(3)テクストを基に、考えを文章化する問題(4)テクストを踏まえて発展させた自分の考えを解答する問題―に分けることができた。
 共通テストの記述式問題として(1)と(2)に加え、(3)も「条件付記述式」の問題として出題する。「設問において一定の条件を設定し」「特に『論理(情報と情報の関係性)の吟味・構築』や『情報を編集して文章にまとめること』に関わる能力の評価を重視する」。(4)に関しては「解答の自由度が高い」ことから、大学の個別選抜での出題が望ましいとした。
 記述式問題作成に当たって、「素材選定の工夫の例」として、論理的な内容を題材にした説明、論説▽新聞記事・社説、会議等の記録、実務的な文章(取扱説明書、報告書、提案書等)、契約書や法令の条文、公文書等▽統計資料(図表・グラフ等)を用いた説明―を挙げている。

指導に生かすポイント

 記述式問題のモデル問題例は、2題を提供している。現行学習指導要領の指導事項との関連を示しており、日常の指導に生かす留意点としても受け止めたい。
 モデル問題例(1)の問1では「40字以内」という条件の中での要約力が求められる(学習指導要領ではC読むこと (1)指導事項 イ文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり、必要に応じて要約や詳述をしたりすること)。問2には読解力と評価する力も問われる(同 C読むこと (1)指導事項 エ文章の構成や展開を確かめ、内容や表現の仕方について評価したり、書き手の意図をとらえたりすること)。
 問3は問1同様の力(同 C読むこと (1)指導事項 イ)に、父娘の会話文から意見の共通点、相違点をまとめる力も必要としている(同 A話すこと・聞くこと (1)指導事項 ウ課題を解決したり考えを深めたりするために、相手の立場や考えを尊重し、表現の仕方や進行の仕方などを工夫して話し合うこと)。問4では条件として「80字以上、120字以内」の記述が必要である(同 B書くこと (1)指導事項 イ論理の構成や展開を工夫し、論拠に基づいて自分の考えを文章にまとめること)。
 モデル問題例(2)の問1はモデル問題例(1)の問1同様、要約(同 C読むこと (1)指導事項 イ)する力が試されている。
 問2はモデル問題例(1)の問4(同 B書くこと (1)指導事項 イ)、問3はモデル問題例(1)の問1など(同 C読むこと (1)指導事項 イ)で培われた力を発揮することで対応できそうだ。

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