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「共通テスト」モデル問題例に対応

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(株)ナガセ・本社主催 全国セミナー始まる

 全国12会場で展開する夏の教育セミナーがスタートした。大学入学共通テストの実施方針が公表された直後の授業改革先取り対応セミナーに受講者の関心は高く、皮切りとなった金沢会場(1日)、横浜会場(2日)でのセミナーは盛況となった。今回は英語・国語・数学の教科別分科会も用意し、模擬授業的な要素も取り入れ、明日の授業改善につながると好評だった。

特別講演(1)
浅田 和伸 (独)大学入試センター理事・副所長
江戸 朋子 文科省高等教育企画課課長補佐
基礎診断テスト、年内に審査基準
共通テスト 新しい学力観に沿うよう改善

 特別講演(1)は「高大接続改革の進捗(しんちょく)状況」などをテーマに、文科省高等教育企画課、江戸朋子課長補佐(金沢会場)、浅田和伸・(独)大学入試センター理事・副所長(横浜会場)がそれぞれ解説した。
 江戸課長補佐は今回の高大接続改革を、高校教育までの初等中等教育局、大学教育の高等教育局と縦割り組織だった文科省が、組織の枠を超えて議論した点で画期的と指摘。必要となった背景に、世界での日本の相対的な位置が下がってきていること、職業の大半が技術革新により失われること、人口減少などから新たな価値を創造できる人材の育成が必要となったことを挙げた。
 また、7月に公表した高校生のための学びの基礎診断について、基礎学力定着に向けたPDCAサイクルの在り方について解説し、基礎診断テストの審査基準を年内に出すと話した。
 さらに、約20年後には18歳人口が100万人まで減ることが予想されているとし、現状の大学規模のままでは大学入試などに問題が生じると懸念。日本の大学生の勉強時間の少なさを挙げ、現在、大学にはディプロマ、カリキュラム、アドミッションの三つのポリシーを定めることを課し、大学教育の改善を目指していると説明した。
 推薦・AO入試改革に触れ、例えばAO入試は「総合型選抜」と名称を改めるなどとして、どのような形態の入試でも学力の3要素を測る試験を課す方向性にあることを示した。
 浅田和伸・大学入試センター理事・副所長は平成32年度に導入される大学入学共通テストなどについて説明した。記述問題を加える他、選択問題も新しい学力観に沿うよう改善したい考えを示した。今秋と来年度内に、それぞれ5万・10万人を対象に試行すると報告した。
 一方で、高大接続改革について「入試を変えるだけの小手先のものではない」と強調。「高校・大学の教育改革」と位置付けた。多くの大学で高校範囲の学び直しを行っている現状を批判し、その必要性を訴えた。
 浅田氏は「入試の変化にかかわらず、生徒をどう育てるかを念頭に教育の在り方を見直してほしい」と呼び掛けた。

特別講演(2)
入試出題の変化や育成する力解説
山本 崇雄 東京都立武蔵高校・附属中学校主幹教諭
湯尾 健児 三田国際学園中学・高校校長
城野 大輔 三田国際学園中学・高校教諭
岩佐 純巨 鈴鹿中等教育学校特命講師

 金沢・横浜両会場での特別講演(2)では、山本崇雄・東京都立武蔵高校・附属中学校主幹教諭、城野大輔・三田国際学園中学・高校教諭(金沢会場)、湯尾健児・三田国際学園中学・高校校長(横浜会場)、岩佐純巨・鈴鹿中等教育学校特命講師が登壇し、大学入学共通テストのモデル問題例などについて解説した。
 4技能が重視される「英語」は山本教諭が、近年の大学入試の出題方法の変化について解説。設定された特定の状況に合った英語を記述する問題、自分の立場を明確にし、意見を書くなど議論を想定した問題、絵からその状況を説明する問題―の3点が多くの国立大学などで出題され始めていることを紹介した。その上で、こうした問題の「対策」を行うのではなく、解くために必要な力を育成する活動を授業に取り入れていく必要性を語った。
 城野教諭は国語のモデル問題例について「これまでと変わる部分と変わらない部分があるが、重視されているところを見ることが大切」と語り、記述式・マークシート式の問題例について、生徒に求められている力を分析。記述式では判断力、編集力、論理力と表現力、マーク式ではこれらに加え知識と分析力が問われるとし、これらは新しく変わったものではなく、これまでも求められていた力が、より前面に出されたものと解説した。
 また、問題の内容が、言語活動の場面となっていることについて、高校の授業改革を進めてほしいという作問者の意図があると推測できると話した。
 こうした出題について、同校の湯尾健児校長も分析した。登場人物と同じ立場の意見を記述する設問があることについて着目。生徒に「他者の考えを理解する力が求められている」と指摘した。
 数学については、岩佐特命講師がこれまでのセンター入試の出題方法が、一般的な選択問題とは異なり、単に穴埋めするのではなく、行間を補充するなど解答者が全ての文脈を構成しないと解けない記述に近いものだったと振り返った。
 モデル問題例として示された「記述式」問題などについては、文章や図、グラフなどが多く配されており、数学の能力だけでなく「長い文章を嫌がらず読む能力」も必要になるのではないかと話した。

分科会
英語
繰り返す「循環型」の勉強を

 教科別分科会・英語(金沢・横浜会場とも)は、東京都立武蔵高校・附属中学校の山本崇雄主幹教諭が、生徒が主体的に活動する授業を紹介した。
 山本教諭は、テストを終えたら次のテストのために勉強する「直線型」ではなく、同様のことを何度も繰り返す「循環型」を理想とする。また授業は教員の思いが大切として、社会とのつながりを意識すること、生徒が英語を使って何をしたいか考えられるようにすることを自身の思いとして語った。一方で、制度面の変更がない中で多くの授業改革が求められているため、授業のスリム化として、生徒に任せる部分をつくり時間を短縮する実践を紹介した。
 山本教諭は授業の冒頭で、ペア学習を中心にウオームアップを行う。このとき、例えば音読練習では、カランメソッドやバックトランスレーションなど幾つかの練習方法を生徒に紹介。「5分後にすらすら言えるかチェック」と課題を出し、練習方法は生徒に任せる。
 教科書の学習では、近年の大学入試の変化に対応して、まずは写真や絵を基に本文の内容を推測。パートナーを替えてペアで数回、考えを発表し合う。
 授業の最後でも、学習した英文を絵にし、その絵を基にペアで解説し合うなど、山本教諭は「描画」の有効性を語った。

国語
相互通行型授業へ研修重視

 教科別分科会・国語では、三田国際学園中学・高校の城野大輔教諭が、同校でのアクティブ・ラーニングに関する取り組みを、実践・研修・評価の3点から説明した(金沢会場)。
 同校ではアクティブ・ラーニングを「相互通行型授業」と呼ぶ。「はやりでアクティブ・ラーニングという言葉を使うのではなく、学校で定義することが重要」と話す。
 授業のフォーマットを作り、教師は「ティーチャー」でなく「ファシリテーター」として授業することを基本とする。
 相互通行型授業を成立させるためには、教員が共通認識を持つことが大切として、教員研修を重要視。研修を学校行事のように位置付けるなど、全員参加で年間32時間以上を確保する。
 さらに相互通行型授業に大切なのが評価。同校独自のルーブリックを示しながら、生徒の学習が深まらない要因について城野教諭は「教師が生徒に求める能力を、生徒に伝えていないから」と話す。
 横浜会場でも同校の取り組みについて、湯尾健児校長が発表した。
 この中で、同校が重視する校内研修では、例えば、国公立大学の問題を教員が解く機会を設定していることを報告した。校長自身が誤答した際に、若手教員からアドバイスを受けることもあるという。湯尾校長は、教員が指摘し合うことのできる学校文化をつくりたい考え。個々の教員の経験を共有し、授業改善に生かす狙いがあるという。

数学
話す活動取り入れ思考可視化

 教科別分科会・数学(金沢・横浜会場とも)は、私立鈴鹿中等教育学校の岩佐純巨・特命講師(授業力向上推進部長)が「『数学的な見方・考え方』を育成する授業を目指して!」と題して、指導上の配慮事項などについて話した。
 次期学習指導要領に向けて示されている「数学的な見方・考え方」や「資質・能力」などを解説。
 物事に対する「見方・考え方」は「多様な視座の獲得につながり、そうした視座を獲得していくことで、生きる力になっていく」など、自身の考える「数学的な見方・考え方」も披露した。
 また、指導上の留意点に、今持っている知識を信じさせることや、生徒に自らの考えを話させる活動を取り入れ、思考過程の可視化を図ることなどの必要性を挙げた。
 50代半ばごろに学び
合いを模索し、グループで考える機会を多くする授業スタイルに変えたという。模擬授業の題材などを示し、生徒同士でも学べるための授業方法も示した。

高校生コースを紹介
トビタテ!留学JAPAN

 官民共同の留学促進プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」について、文科省で同プロジェクト高校生コースを担当する水口貴之氏(金沢・横浜会場とも)が留学制度について解説した。
 近年の技術革新やグローバル化が進む社会情勢から留学で定期的に複数の国を、自分の目で見て体験する必要性を指摘。
 トビタテ!留学JAPANの参加区分、留学までのプロセス、留学資金提供などの支援体制を紹介すると同時に、留学を通して高校生に求めることとして、グローバルリーダーになること、海外へ日本の良さを発信するアンバサダーになること、留学の良さを日本に広めるエバンジェリストになることについて説明した。

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