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入試改革、学部教育改善 16大学が講演

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(株)ナガセ、本社主催「夏の教育セミナー」

 8月に開催した「夏の教育セミナー」〔(株)ナガセ・日本教育新聞社共催〕では、国立大学や東京都内の有力私立大学を招いた分科会も開かれた。入試改革や学部教育の改善をテーマに全国で16大学が講演。参加した高校関係者の関心を集めた。

高校での活動など多面的に評価
長谷川 晃 北海道大学理事・副学長

 長谷川晃・北海道大学理事・副学長は「北大の大学入試改革とアドミッションポリシー」と題し、同大の近未来戦略や入試の改善策を語った。
 同大の教育研究理念は、フロンティア精神、国際性の涵養、全人教育、実学の重視の四つで、開拓精神を持ち、国際感覚を身に付け世界で活躍できる人材の育成に力を注いでいる。グローバル人材の育成では特別教育システム「NITOBE教育システム」を展開。求める学生像としては、基礎的・基本的な知識・技能等に加え、問題解決能力、創造力、コミュニケーション能力、論理的思考力、リーダーシップなどを掲げている。
 入試については従来型の学力試験を重視したものに加え、「学力試験+高校の活動」や「総合評価型AO」を導入するなど、生徒を多面的・総合的に評価する仕組みづくりを進めている。

学力重視、AO入試の割合増
大槻 達也 東北大学理事

 東北大学の大槻達也理事は、研究第一主義の伝統や、門戸開放の理念、実学尊重の精神などの特色について語った。また、時代の変化の中で、学びの転換を図る全学教育の現状についても触れた。
 170を超えるテーマから一つを選び、新入生全員が受講する「基礎ゼミ」、演習・実習・実験・フィールドワークなどによってアクティブ・ラーニングを取り入れた「展開ゼミ」、留学生と共に学ぶ場となる「国際共修ゼミ」では協働しながら、新たな価値の創造を目指す。
 学事暦も「クォータ制」を導入して、海外派遣などを容易にし、グローバル化にも対応する。
 入試改革では、AO入試での入学割合を増やしてきた実績がある。その際、同大では一般入試と同等に学力を重視してきた。「東北大を第一志望とする、意欲あふれる志願者をとりたい」などと話した。

留学生派遣総数は絶えず上位
重原 孝臣 埼玉大学理事・副学長

 一つのキャンパスに5学部があり、学部間の連携が取りやすいという埼玉大学。同大の重原孝臣理事・副学長が、教育改革・入試改革について説明した。
 国立大学の中では、留学生派遣総数は絶えず上位を占め、同大との交流協定を締結する海外大学は、2010年当時と比較すると4倍増と増えてきている。
 重原副学長は各学部のアドミッションポリシーを解説しながら、求める人材像を示した。例えば、教養学部。求める人材の一つに「英語をはじめとする外国語を習得する意欲のある人」を示す。試験の一つに海外留学経験者入試を取り入れているが、同学部は海外留学も一つの目標に置く。
 2021年度の一般選抜に当たっては、調査書、志願者本人が記載する資料などの活用方法を検討しているところだという。

4技能の外部試験、加点・満点方式で議論
佐藤 智司 千葉大学副学長

 千葉大学の佐藤智司副学長は、映像を交えながら、変わりつつある大学の姿を紹介する一方、2021年度の入学者選抜の大変革については、学内で検討段階にある実情を語った。
 具体的には、点数で合否を決めている一般入試の中に、調査書などをどう位置付けるかも、さまざまな意見があるという。記述式の問題を活用する方向は固まっているものの、点数化についても同様に議論がある。
 4技能を測る外部検定試験の活用では、加点方式か満点方式かで意見が分かれる。
 既にグローバル人材育成を主目的とする国際教養学部の通常型入試では、TOEFLiBT80以上などで「満点」換算をしている。だが、他の学部では「満点方式はあり得ないのではないかという考え方で」活用方法の検討を進めているという。

推薦入試の成果を指摘
南風原 朝和 東京大学高大接続研究開発センター長

 東京大学の南風原朝和・高大接続研究開発センター長は推薦入試と英語の民間資格・検定試験の活用について講演した。
 推薦入試については、推薦入学生への調査から「(各学部への)進学割り振りを気にせずに履修できるので本当に興味のある授業を選ぶことができた」「進学先が決まっているため、4年間の学習計画が立てやすい」などの声が上がっていることを紹介した。
 英語の民間試験の活用をめぐって、国立大学協会が一定の方針を示した後も東大は学内で慎重な議論を続けている。
 南風原氏は、出願資格にしても加点として利用するにしても課題は大きいと指摘。加点の場合、配点割合を2割にしても東大では4・9点(2次試験の英語の4%)にとどまり、配点に比べ、受験生の負担が重過ぎるなどとして活用に否定的な見方を示した。

少人数教育とグローバル化強みに
三隅 隆司 一橋大学学長補佐

 社会科学の分野で、国内トップクラスの研究力を持つ一橋大学。三隅隆司・学長補佐(教育改革担当)は学部教育で力を入れている分野に少人数のゼミナールとグローバル化への対応を挙げた。
 特にグローバル化への対応では学生の海外留学を促進するため、4学期制を導入した。海外大学のサマースクールなどに参加しやすくした。
 入試では2018年度入試から全学で推薦入試を導入。各学部で各10〜15人を募集した。
 大学入学共通テスト導入後の入試については、現在の試験教科・科目から変更を予定していないことを公表した。
 また、英語の民間資格・検定試験の利用は「一定の評価が定着している試験を活用する」と述べた。資格・検定試験と共通テストの両方を利用する方向で検討を続け、後日、正式に公表するという。

国大協見解の枠組みの中で
高木 まさき 横浜国立大学副学長

 横浜国立大学の高木まさき副学長は、国立大学の中でも就職率が高いなど、同大学の特徴と共に、各学部の教育の特色、検討中にある2021年度入学者選抜の在り方などに言及した。
 また、高大接続改革が求められている時代状況、学習指導要領の改訂、授業改善の在り方などについても話した。
 このうち、同大の入試では基礎学力や後期日程が重視されていることなどを、全体的特徴として挙げながら、例えば、教育学部では小論文や、集団面接などを全員に課しているなど、個別の学部の現状も紹介した。
 検討中にある2021年度の同大入学者選抜の在り方に関連して、「基本的には国大協が示した見解の枠組みの中で考える」とし、各学部対応にも言及。英語科目の取り扱いや新テストの記述式問題などについての検討課題に触れた。

資質・能力見極める入試へ
柴田 正良 金沢大学理事・副学長

 「金沢大学の教育改革と新しい入試のあり方」をテーマに、柴田正良・金沢大学理事・副学長は同大学の今後の入試方針などを語った。まず大学の歴史や現在(「人間社会学域」「理工学域」「医薬保健学域」の活動例)に触れた後、「金沢大学ブランド」の人材育成(「国際感覚に優れ、世界のどこでも、いつでも活躍できるタフな人物」)を目指していることなどを説明した。
 大学の10年後の姿を見据え、約300科目の共通教育科目を抜本的に改革したことなどを述べた柴田副学長。続けてアドミッションポリシーを交え、今後の入試ビジョンについて語った。
 具体的には、高大接続の新しい試みとして2020年度から導入を検討している「KUGS特別入試」など。一発勝負のペーパーテストで測れない受験生の資質・能力を見極める入試となる方針。

英語検定試験導入、課題多い
木俣 元一 名古屋大学副総長

 名古屋大学の木俣元一副総長は「入学後の学修成果を決めるのは何か」との問いを立て、学生の意欲や、主体的に学びに向かう力の重要性を語った。大学入試時点での成績と、入学後の学修成果に相関関係がないとした。一方、大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストのうち、英語の能力を測定するために導入する民間検定試験に関して、「未解決の課題が多い」として、名古屋大学では、まだ、導入するかどうか決まっていないことを紹介した。「早く方針を出さないといけない」としつつ、民間検定試験を導入することで経済格差・地域格差が生まれる可能性があるなどの課題を示した。
 また、文系・理系の壁を超える試みとして同大学教育学部の入試を挙げた。「(理科2科目、地歴公民1科目の)理系パターンでも受けられる」と話した。

資格・検定試験、解答公表求める
木南 敦 京都大学高大接続・入試センター副センター長

 「大学が入試として使うためには、せめて試験問題と解答を公表してほしい」
 京都大学の木南敦・高大接続・入試センター副センター長は英語の資格・検定試験について、そう要請した。
 文科省の平成31年度大学入学者選抜実施要項では「試験問題は原則として公表する」とされているが、多くの民間資格・検定試験では、過去の問題はもちろん解答も公表していない。それを踏まえて、冒頭のように求めた。
 講演後半は18歳人口と大学進学率の推移について言及した。木南副センター長は、今後の少子化と進学率の増加に伴い、「試験問題が易しくなっていくことは避けられない」と指摘。「入試には、(合格に向けて)努力するという主体性を測る側面もある。いたずらに難易度の高い問題を出しては選抜機能を果たせない」と語った。

AO・推薦入試で主体性ある学生を
豊田 岐聡 大阪大学副学長

 AO・推薦入試で受験生の人気を集めている大阪大学。豊田岐聡・副学長(入試担当)は、AO・推薦合格者の特徴などを中心に話した。
 ここ数年、大阪大はAO・推薦入試の募集人数を増やしている。平成29年度の270人から30年度は309人に、来年度は360人を設定した。
 大学側にとってのメリットは「主体性と専門分野への情熱を持っている学生が集まること」。合格者へのアンケートでは、大学選択で最も重視したことに「学びたい専門の学問や研究ができる」を選んだ学生が一般入試に比べ、1・7〜2倍に達したという。理系では特に、研究志向が強く、博士課程の学位を取得したいと答えた学生も一般入試より多い、3〜4割いた。共通テストや新学習指導要領を踏まえ「共通するのは自分の考えを持ち、表現することだ」と強調した。

本年度から新たなAO入試
藤井 勝 神戸大学理事・副学長

 来年度に創立100周年を迎える経済経営研究所など研究拠点となる施設を多く持ち、学生の研究教育にも力を入れる神戸大学。藤井勝理事・副学長は「今後の入試改革に向けて、本年度は正念場になる。大学として真摯に対応していきたい」と語った。
 神戸大では平成28年度、「人間性」「創造性」「国際性」「専門性」を学生が身に付けることができるよう、新たにディプロマ・ポリシーを策定。学部生が卒業時に身に付けるべき能力を示した「神戸スタンダード」に基づき、4年間を見通した教養教育を行っている。
 入試改革に関連して本年度から、「『志』特別入試」との名称でAO入試を実施する。センター試験は課さず、調査書などから受験生の主体的な取り組みを評価。合格者にはスクーリングをはじめとする入学前教育も予定しているという。

一般入試「みなし満点」を採用
杉原 敏彦 広島大学入学センター長

 広島大学の杉原敏彦・入学センター長は講演で、英語の民間資格・検定試験の利用について説明した。同大学では利用の方針を協議した結果、まずはAO入試で利用した後、一般入試に広げることを決めた。
 現在は一定のスコアを持つ受験生に出願資格を与えたり、試験結果に加点したりするなど学部によって異なる。既に英語の各試験の換算表を独自に作成していたが、今回、文科省が試験スコアの対照表をまとめたことで、それを利用することになると語った。
 一般入試でも来年度入試からは積極的に活用する。CEFRで「B2以上」(英検準1級以上)の条件を満たした場合、センター試験の外国語の得点を満点とする「みなし満点」を採用。「英語コミュニケーション能力を付けようとしている人を欲しいという大学からのメッセージだ」と説明した。

物事を立体的に見られる学生選抜
丸野 俊一 九州大学理事・副学長

 「グローバル社会の動向」「高大接続教育改革」を踏まえ、九州大学の教育・入試改革について説明した丸野俊一・同大学理事・副学長。「グローバル社会」で必要なスキル・学力として、「創造的・批判的な思考」「非定型的かつ柔軟性のある判断・適応力」などを挙げた。求められるのは、「『知識獲得の学び』から『問題発見・解決の学び』への思考モードの切り替え」と述べた。
 従来のAO入試をさらに発展させて構想したという新入試「QUBE」。物事を立体的、多面的に見ることができる学生を選抜していく方針を掲げている。同大学では「共創学部」の新設に伴い、「各学部入試で段階的に実施していく」と述べた丸野副学長。「大学入学共通テスト」の導入時期(2021年度入試〜)に合わせ、本格的に実施していくことを明らかに
した。

出願時に「主体性」など提出
沖 清豪 早稲田大学入試開発オフィス長

 早稲田大学の沖清豪・入試開発オフィス長は、来年度以降の同大学の入試改革について講演した。中長期計画「ビジョン150」に沿って改革を進めている早稲田大が、2021年度入試から全学的に導入するのが「主体性」の評価だ。
 一般入試のインターネット出願時に「主体性」や「多様性」「協調性」に関する経験を受験生本人に記入してもらう。当面、得点化はしないで、まずは出願要件とした上で今後、活用方法を探るという。
 学部ごとの入試改革で注目されたのが、21年度からの共通テストで「数学1・A」を必須にすることを決めた政治経済学部だ。「経済学を理解するには一定の数理的能力が不可欠」だと判断した。英語の資格・検定試験についても、30点程度の配点で利用する。「英語の4技能と合わせ、学力の3要素を適正に評価する入試を目指したい」と語った。

学部主導で入試改革先取り
大石 裕 慶應義塾大学常任理事

 首都圏6キャンパスに10学部を有し、自由で明るく、伸びやかな学風だという慶應義塾大学。大石裕常任理事は同大学の強みや、多様な選抜方法を取り入れる入試制度の現状について話した。
 入試の在り方は、各学部が主導しながら、多様さを誇る。例えば、経済学部は全授業を英語で行うプログラムに対応した「PEARL入試」を取り入れ、法学部はAO入試として全国7地域から10人ずつを優先させる「FIT入試」を実施するなど、改革を先取りしてきた。選抜に当たっては、読解力、論理的思考力、表現力などをみる小論文なども重視する。
 「多様なものの見方」を求め「アンテナを高くして、考える習慣を付けてほしい」と訴えるとともに、自分の考えを文章にする練習、あるテーマについて友達と討論する―などの必要性を高校側に訴えた。

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