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英語教育に向けた環境づくりを支援

19面記事

企画特集

作成した英語カードで、みかんの数を尋ねる田村恵教諭

英語カード作成ソフトを市内全小学校に導入
伊勢崎市

 新学習指導要領で実施される小学校英語の必修化および教科化。今年度から移行期間に入り、現場では指導体制や授業への準備が急がれている。なかでも、英語に慣れ親しむための効果的な教材づくりは忙しい教員にとっては悩みの種だ。こうしたなか、群馬県伊勢崎市では全小学校に教材づくりを省力化できる英語カード作成ソフト『NEW Flash Card Maker』(アプリコット出版)を導入し、教員の負担軽減を図っている。

英語カードづくりの手間を削減

NEW Flash Card Makerで作成したカード
NEW Flash Card Makerで作成したカード

 伊勢崎市立殖蓮小学校(狩野道男校長)では、昨年度から週1時間とモジュールプログラムを週3回組み合わせるかたちで、楽しみながら豊かな表現力を育む英語の授業に取り組んでいる。
 「Hello!」という元気の良い挨拶から始まった田村恵教諭と山津晴美イングリッシュサポーターのティーム・ティーチングによる2年生の授業では、まさにそんな同校の目指す子どもたちがいきいきとコミュニケーションする様子が伝わってきた。
 この日の学習のめあては、数を尋ねるときに使う「How many~?」と、お願いするときに丁寧さが増す「please」の使い方を覚えること。ここで最初に使われたのが『NEW Flash Card Maker』(Windows 10対応)で作成した英語カードだ。
 本ソフトは、英語学習に必要な867語の語彙のイラストを搭載。スペルを1文字打てば、その文字で始まる絵の候補が出てくる仕組みで、文字のみ、絵のみ、文字&絵の3タイプで印刷できるのが特長。しかも、印刷サイズも大判カードから児童用カルタまでと幅広く、プレビュー画面など操作性にも優れている。特に、全学年で英語授業が始まれば大量にカードが必要になることを考えると、短時間で教材を作れるのは大きな魅力だ。
 また、5~6年生は英語が「教科」になるため、文字の「読み・書き」も指導する必要がある。本ソフトは業界初となる「書く」ことを意識した4線付で教育的な文字を表示できることから、児童の正確な書き写しにも貢献する。

教室の壁などにも常に英語カードを掲示
教室の壁などにも常に英語カードを掲示

イメージを膨らませ、思考を伴う活動に発展

 田村教諭がりんごの絵が描かれたカードを見せて「How many?」と尋ねると、一斉に数を答える子どもたち。カードを裏返し、正解「four apples」を見せる。これをバナナやみかんなどの絵を使って次々に反復学習していった。
 こうした絵と文字を組み合わせた英語カードは教室の壁などに数多く掲示されており、子どもたちが自然と英語に親しめる工夫としても活用されている。
 続いて行われた「please」の使い方を覚える買い物ゲームでも、教室の中でリアリティを持たせるイメージづくりにイラストを活用。子どもが店側と買う側に分かれて行う「How many?」、「Two cakes Please!」という会話のやりとりから、買い物カートの絵に買った数だけ商品シールを貼らせる場面を用意し、「どこの店に行こうかな」、「何個買おうかな」など思考を伴った活動に発展させていた。

英単語のインプットに効果的

 そんな英語カードの使い方について田村教諭は「授業では前時の振り返りに活用することが多いですが、復習やアルファベットの読みが中心になるモジュールの時間は英単語のインプットに便利でよく使っています」と話す。また、モジュールの時間は学年一斉で行うため、既存のフラッシュカードだと使いまわしができないことに触れ、「プリントして各クラスに備えておけるので重宝しています」と話してくれた。
 さらに、英語カードはどんな授業にしたいかを相談した上で山津氏が作成しているが、「ソフトの操作が簡単なので、短時間で思ったものが作成できます。本校では学年によってICT環境が異なるため、ビジュアルに訴えるには英語カードを使う方が使いやすく、効果的だと考えています」と山津氏。その成果は子どものボキャブラリーの豊富さや、習っていない単語でも聞き取りするだけでスペルが予想できるなどの効果として表れているという。

授業の実態や目的に合わせて作成できる

町田博幸指導主事
町田博幸指導主事

 そんな『NEW Flash Card Maker』を市内全校へ導入した理由について、教育委員会の町田博幸指導主事は「市では教員をサポートするALTやイングリッシュサポーターを各校に配置することで、子どもたちの言語活動の充実を図っています。本ソフトはその間をつなぐものとして、先生方が授業のプランニングをしながら思い通りの教材を作り出せるメリットがあります」と語る。
 そこには「先生方は既製品よりも、授業の実態や目的に合わせた自作の教材を使いたいもの」という思いがあってこそ。確かに探せば素材はいろいろあるが、一から教材を作るのは多忙な教員にとって負担が大きい。「その意味でも安価で効率よく使えるソフトだと思いますし、ICT環境が充実すればモニターでの投映も含め、さまざまな使い方が可能になると思います」と今後のさらなる活用に期待を寄せた。

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