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実践編 リーダーシップ教育のフロンティア

14面記事

書評

高校生・大学生・社会人を成長させる「全員発揮のリーダーシップ」
中原 淳 監修
高橋 俊之・舘野 泰一 編著
意見出さぬ会議で態度変化

 これは時代が求めるところの「全員がリーダーシップを発揮する」を実証した、画期的な内容が紹介されている。これまでのリーダーシップとは、多少の困難も勇敢に乗り越えて、目的を達成させるカリスマ性が思い浮かぶ。そのリーダー性は、天性のもので、一人が発揮して、引っ張る・まとめる力をイメージしていた。しかし、本書のリーダーシップは異なる。(1)全ての人が発揮する(2)目標達成のため他のメンバーに「影響を与える」あらゆる行動(3)みんなで連動しながら発揮する(4)学習も可能―としている。最初は懸念を持ちながら読み進めた。
 理論編と実践編の2冊のうちの本書は、実践編である。内容が理解できるにつれて、興奮に震えるような感覚が私には湧き上がった。第8章には、実に興味深いことが紹介されている。それは「質問会議」である。意見は一切出さない、「質問」と「回答」だけの会議のことである。実際やってみると、一部の意見に振り回される会議とは異なり、学生が深く傾聴し、目つきも変わり前傾姿勢になっていた。
 紛れもなく教育は窮し、青年の目にも輝きが見られない。今こそ既成概念を砕き、全員の能力を発揮させるリーダーシップの視点が必要である。まだ間に合う、日頃物足りないと感じている高大の担当教員は、確かなる未来を築くためにも早々に読み、実践願いたい。
(2376円 北大路書房)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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