日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

高校を核に小・中と連携 「ハブスクール事業」

企画特集

十日町高校の授業の様子

地域全体でグローバル人材育てる
新潟県

 小学校英語の本格実施を前に、改めて小中高の校種間連携の重要性が増している。小学校と中学校の英語教育の接続は大きな課題だが、グローバル化の進展を踏まえた高校での人材育成とそこにつながる中学校の英語教育の充実も欠かせない。こうした中、新潟県では平成26年度から、高校を中心に、同じ地域の小・中学校と連携して英語教育の授業改善等を図る「ハブスクール事業」を実施している。地域とも連携し、英語教育の充実に取り組んでいる。

他校種の授業見学 教員同士の学びに

 新潟県が英語教育で進めている「ハブスクール事業」は、高校を「ハブ(車軸)」に、同じ地域の小学校、中学校、大学、教育委員会、団体、企業をつなげる取り組み。大きなねらいは「グローバル人材育成に向けた授業改善」。小学校4年間、中学校と高校それぞれ3年間の計10年間の目標・評価・授業が一貫した英語教育を推進するとともに、子どもが意欲的に取り組み、発信力を中心に資質能力を高め合う授業に改善していくことを目指している。
 具体的には、平成29年度から同事業に取り組んでいる十日町市の場合、県立十日町高校を中心(ハブヘッドクウォーター)に、県立十日町総合高校、十日町市立の十日町中学校、川西中学校、十日町小学校、まつのやま学園(小中一貫校)が連携。各校輪番で月1回のペースで授業公開を開催し、授業の後には参加教職員等による協議会を開催している。
 「教員はこれまで、自分が生徒だった頃の経験や、『他の校種ではこういう学習をしているんだろう』という想定だけで授業を行っていた面も少なくなかった」と語るのは、同事業を担当する新潟県立教育センターの本間康一指導主事。外国語活動や英語を学んだ小学生を受け入れる中学校の教員にとって、小学校の授業の様子を見ることができることは、授業改善にとても役に立つし、高校の教員にとっても中学校の授業を見ることは同じことが言える。
 逆に、小学校教員にとっては、中学校への接続を具体的に考えながら授業を組み立てることが可能になり、中学校や高校の教員からのアドバイスが授業改善の大きな力になる。中学校教員も高校の授業を把握することで、具体的に生徒にどこまでの力を身に付けさせれば良いのか、想定することが可能だ。また、同じ校種同士でも授業を見学し合って意見交換することも授業改善につながる。


小・中・高・教委の英語教育担当者が集まり、意見交換を実施

地域の良さを知り発信できる力を育成

 新潟県は教育振興基本計画の中で、「キャリア教育の推進」の項目に、“グローバル化に対応した教育の推進”を位置付けている。ここでは「日本人としてのアイデンティティや日本の文化に対する深い理解を前提として、豊かな語学力・コミュニケーション能力、主体性・積極性、国際理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できるグローバル人材の育成」を目指すとしていることから、ハブスクール事業においても、地域との連携の推進は重要な柱となっている。
 例えば、十日町市では、教育大綱で「市の魅力をしっかり理解してもらい、世界で活躍できるグローバルな感覚も持ちながら、ふるさと十日町市にも目を向ける児童生徒」を育てることを掲げている。この目指す人づくりに係る英語教育を充実させることがハブスクール事業のポイントの一つだと言える。
 この地域では、里山の自然の中に芸術作品を展示し、国内外から50万人以上を集める「大地の芸術祭」が3年に1度開かれている。昨年の開催に合わせて十日町小学校では訪れる外国人観光客と英語でコミュニケーションすることを想定し、スモールトークの授業を実施。児童たちはさらに地域を紹介するPRパンフレットを作成し、実際にオリジナルの缶バッジを渡しながら外国人観光客と交流することにも挑戦した。パンフレットには、小学生の文章を高校生が翻訳した英文も掲載。小学生と高校生が連携した活動にもつながっている。
 「英検を受ける生徒も増えるなど、児童生徒の意欲を高めることにもつながっている」と本間指導主事。また、「県立の高校と市立の小・中学校が連携することで、県教育庁と市教委の連携にもつながっている」という。
 十日町市では、AFS留学生の受け入れや、多くの外国人留学生が学んでいる国際大学(南魚沼市)の学生との交流も積極的に図っている。新潟県教育庁高等学校教育課の鈴木綾乃指導主事は「持続的な体制づくりが今後の課題」と語る。
 平成26年度から3年間、同事業に取り組んだ村上市では、イベント等で配布するパンフレットを高校生が作成。地元からは最近もパンフレットの改訂の要望が高校に寄せられるなど、学校と地域との連携が続いているという。同事業終了後も学校間や地域等との連携体制を継続していくためには、教職員の主体的な取り組みとともに、地域に根付いた活動にしていくことも重要だ。地域全体で英語教育の連携体制に取り組むことで、地域の活性化につなげることも期待される。


中間報告会で十日町ハブスクール事業の計画発表や進捗報告を行う

企画特集

連載