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知財創造教育【第3回】学習指導要領との関係

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 「『○○(マルマル)教育』は、もう間に合っています。」
 知財創造教育の推進について、ある教育関係者の方にご説明しようとコンタクトした際の返答でした。学校教育現場の一部には、教員が多忙化する中、新たな指導内容を導入するような取組に対して嫌悪感が広まっていると仄聞しています。知財創造教育も、そのような取組の一つとして捉えられたのかもしれません。
(文=仁科雅弘・内閣府知的財産戦略推進事務局参事官)

 2016年12月の中央教育審議会の答申(注1)を受けて公示された小・中・高等学校の学習指導要領(以下、単に「学習指導要領」という。)では、育成を目指す資質・能力の三つの柱として、「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」及び「学びに向かう力、人間性等」が掲げられ、児童・生徒に豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手となることが期待されています。そして、全ての教科等がこれら三つの柱で整理されるとともに、知的財産に関する内容が充実されました。

 内閣府では、知財創造教育が学校教育の現場で実践されるためには、それが学習指導要領の内容と整合したものであることを示すことが必要との認識のもと、知財創造教育推進コンソーシアム(第4回連載で紹介予定)内に設置した検討体での検討を経て、学習指導要領が育成を目指す資質・能力の三つの柱と知財創造教育との関係を、以下のように整理しました。

 「知識及び技能」=「(1)知財の決まりを知る」
 「思考力、判断力、表現力等」=「(2)新しい創造をするための思考力、判断力、表現力等を育成する」
 「学びに向かう力、人間性等」=「(3)新しいものを創造しようとする態度を育成する」+「(4)創造されたものを尊重する態度を育成する」
 「新しい創造をする」=(2)+(3)
 「創造されたものを尊重する」=(1)+(4)

 前述のとおり、学習指導要領では創造性の涵養が求められており、その創造性の涵養を目指す「知財創造教育」は、全ての教科等を通じて行うことができます。
 例えば、各教科等において「思考力、判断力、表現力等」の育成に向けて指導をする際、教員が「『新しい創造をする』ことを育む」ということを意識することにより、普段の授業に知財創造教育を取り入れることができるのです。そして、当該授業の目的に応じて、知財創造教育に用いることができる教材等を適切に取り入れることにより、当該授業の学習をより効果的なものとすることができると考えています。
 学習指導要領に掲げられた三つの資質・能力を育成するためのツールとして、是非、知財創造教育を活用してみてください。

 次回は、知財創造教育のこれまでの経緯と推進体制について説明します。

 (注1)中央教育審議会、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)(中教審第197号)」、2016年12月21日
 (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

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