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津波に遭った校舎を保存・公開 震災学ぶ新たな学習施設オープン

12面記事

企画特集

気仙沼向洋高校校舎全景

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館

 東日本大震災の被災地では、被災状況や復興の様子を教訓として若い世代に伝えるさまざまな震災学習プログラムが実施されている。宮城県気仙沼市では今年3月、津波被害に遭った高校の校舎を核とした新しい学習施設がオープンする。市内外の子どもたちが防災・減災や命の尊さを学ぶ場として活用することが期待されている。

 東日本大震災の記憶や教訓を、後世と災害リスクの高い他地域に伝えることなどを目的に、「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」が来月10日にオープンする。津波の被害に遭った県立気仙沼向洋高校の旧校舎を震災遺構として保存・公開するとともに、当時の様子などを伝える震災伝承館を併設した施設だ。
 気仙沼向洋高校旧校舎は震災時には津波が最上階の4階まで押し寄せた。校内に残っていた生徒たちは近くの高台へ避難し難を逃れた。また、教職員20名と北校舎の改修工事を行っていた工事関係者25名は屋上に避難し、無事だったという。
 震災遺構として保存される旧校舎は、津波で流れ込んだ乗用車など、当時のありのままの被災状況を間近で見学できる。浸水した南校舎の1階と3、4階の一部、屋上、北校舎1階の一部は内部を公開。また、総合実習棟、生徒会館、屋内運動場は外部のみ公開する。
併設される震災伝承館は、地域での議論や活動、大学との連携等で蓄積してきた防災・減災の知恵と、気仙沼市の復旧復興の歩みをさまざまなプログラムで紹介。学びの場であると同時に、気仙沼市の魅力を発信し、市内外から集う人々の多様な交流を促進することが期待されている。
 館内は、大型スクリーンで津波の脅威を伝える「映像シアター」を設置。写真パネル等で被災の様子や救助・捜索、避難所生活の様子等を伝える「展示室」、語り部講話や映像で被災者の想いを伝える「講話室」などを設けた。
 また、定点写真等で震災前後や震災後のまちの移り変わりを伝える「展示コーナー」や「図書コーナー」のほか、教育旅行等の座学や生涯学習の場として利用できる「研修室」、防災教育体験プログラムやイベント等を実施する「体験交流ホール」なども設置している。
 東日本大震災を振り返る防災・減災学習、「命の尊さ」を改めて認識する学び場として多くの学校が訪れることを期待したい。

 【開館時間(震災遺構・展示エリア)】午前9時30分~午後5時(10月から3月は午後4時まで)。
 【休館日】毎週月曜日、祝日の場合は翌日(土日は除く)、年末年始。
 【特別開館日】毎月11日、防災の日(9月1日)、世界津波デー(11月5日)。
 ※教育・研修旅行を目的とする市外の団体で50名以上利用する場合は事前予約が必要。
 【入館料(震災遺構・展示エリア)】一般600円、高校生400円。小中学生300円、小学生未満は無料。
 ※30名以上の団体の場合は、1人あたり100円引き、また、市内の小中学校の学校行事利用の場合は半額。


震災伝承館(映像シアター)


震災伝承館(展示室A)

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