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学習指導要領が打ち出す新時代の目標「生きる力」。教育現場に大きな変化

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特集 教員の知恵袋

 脱ゆとり教育を目指して2008年に改訂された学習指導要領で、目標の1つとして「生きる力」が打ち出されました。これから大きく変化していく時代を生き抜くために、学力と人間性、健康・体力をバランスよく育てることを目指したものです。この指針は2018年改訂の新しい学習指導要領でも受け継がれています。子どもたちが生きる力を身に付けるためには何が必要となり、教育現場はどう変化していくのでしょうか。

学力、人間性、体力が「生きる力」を構成

 文部科学省は生きる力を以下のように説明しています。

 ―基礎的な知識・技能を習得し、それらを活用して、自ら考え、判断し、表現することにより、さまざまな問題に積極的に対応し、解決する力
 ―自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性
 ―たくましく生きるための健康や体力
 など

 引用=生きる力
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/pamphlet/__icsFiles/afieldfile/2011/07/26/1234786_1.pdf

 社会や経済が大きく変化するなか、子どもたちに求められるのは、幅広い知識と柔軟な思考力に基づき、新しい知識や価値を創造する能力です。

 異なる文化との共存や国際協力が進むのに伴い、コミュニケーション能力や、物事を多様な視点から観察する力、さまざまな情報を取捨選択する能力は欠かせないものとなりました。文部科学省は新しい学習指導要領でこれらの力をこれまで以上に大きく育もうとしています。

文部科学省が提示する3つのポイントとは

 文部科学省は新しい学習指導要領で育てる3つのポイントを提示しました。

 ・学んだことを人生や社会で生かそうとする学びに向かう力と人間性
 ・実際の社会や生活で生きる知識や技能
 ・未知の状況に対応できる思考力や判断力

 これらをバランスよく育成するとしています。そのためには、何のために学び、何ができるようになるのかを明確化して全ての教科を3つのポイントで再整理しなければなりません。例えば、中学校理科の生命領域では、生物の体のつくりと働きについて理解させるだけでなく、観察や実験を通じて生物の多様性に気づかせ、自然環境保全に寄与する態度を養うとしています。

新学習指導要領、小学校では2020年度から

 既に新しい学習指導要領に基づく教育は2018年度から幼稚園でスタートしています。小学校は2020年度、中学校は2021年度から全面実施、高等学校の場合は2022年度の新入生から順次実施される予定です。

 文部科学省はグローバル化やスマートフォンの普及、人工知能とビッグデータの活用による技術革新で変化していく時代に合わせた教育を実施することで、子どもたちに激動の時代を生きる力を身に付けさせようとしています。

特別の教科として道徳がスタート

 大きな変化の1つが特別の教科になった道徳です。小学校は2018年度、中学校は2019年度からスタートしており、新しい学習指導要領では道徳を特別の教科と位置づけています。道徳はこれまで総合的な学習の授業でしたが、なぜ特別の教科になったのでしょうか。

 その背景にあるのは、後を絶たないいじめ問題です。子どもたちの間で起こるいじめにより、さまざまな問題が発生しています。国の教育再生実行会議は2013年、学校でいじめ対策の方針を決め、家庭や周辺地域と連携し対策を講じなければならないと提言しました。

 これに基づき、道徳は特別の教科と扱われ、小学1年生は年34時間、小学2年生から中学3年生までは年35時間の授業が義務づけられています。小さな子どもの段階からいじめが許されないことであることをしっかりと学ぶようになりました。

英語教育は小学3・4年生からに前倒し

 もう1つの大きな変化が外国語教育の充実です。

 現在、小学5・6年生が受けている外国語活動と呼ばれる体験型学習は小学3・4年生に前倒しされました。小学5・6年生からは教科として本格的な英語の授業が始まります。英語は週3回ほど授業が組まれることになり、成績もつけられる予定です。

 文部科学省はグローバル化の進展に合わせ、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能をバランスよく身に付けさせることを目的にしています。例えば、中学校の英語の授業では基本的に全て英語で行われるようになります。

プログラミング教育を必修化へ

 時代に対応した大きな変化としてプログラミング教育の導入も挙げられます。小学校ではプログラミング教育が2020年度から必修化される予定です。

 コンピューターに意図した処理を行わせるためのプログラミング思考(論理的思考力)を学ばせ、子どもたちが将来、選択できる未来の可能性を広げる目的があるほか、身近で起きた問題解決の道筋を論理的に考えられるようにする意図も込められています。

 中学校、高等学校でもプログラミング教育の内容を充実させ、全ての生徒がネットワークやデータベースの基礎を学ぶことになります。

主体的・対話的で深い学びの実現へ

 新しい学習指導要領は子どもたちに生きる力を育んでもらうため、主体的・対話的で深い学びをポイントに挙げています。

 子どもたちが学びそのものに関心を持ち、自己の学習活動を次につなげられるようにするとともに、子ども同士がグループ学習で目標を共有し、先生や地域の人たちとの対話を手掛かりにして自分の考えを広げ、深められる授業内容にすべきだという考えです。各学校にはそれらを実現できる環境整備が求められます。

時代の変化に合わせて変わる教育内容

 時代の変化に合わせて子どもたちの教育内容がこれから大きく変わっていきます。これだけ大きな変化は終戦直後以来と言えるでしょう。

 保護者も学校任せにせず、子どもたちが何をどう学んでいくのかを知っておく必要があります。

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