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「未来の学びプログラミング教育推進月間」スタート

7面記事

ICT教育特集

プログラミング教育の実施に向けて
中川 哲 文科省プログラミング教育戦略マネージャーに聞く

 文部科学省、総務省、経済産業省では、2020年度から始まる小学校プログラミング教育の円滑な実施に向けて、本年9月を「未来の学びプログラミング教育推進月間」と定め、これまで関係する取り組みを通じて全国の小学校における準備を推進してきた。そこで、文科省プログラミング教育戦略マネージャーを務める中川哲氏に話を聞いた。

コンピュータを使うことをベースにプログラミング的思考を育成する
 ―改めて、小学校にプログラミング教育が導入された理由について教えてください。
 今、私たちの生活が便利になっているのはコンピュータ等の情報通信技術の支えがあるからで、子どもたちが大人になる頃にはそれがもっと進展する。と考えると、子どものときからデジタルネイティブな発想を持つこともより必要になってきます。
 でも、だからといって人とのコミュニケーションや信頼関係をおろそかにすると、勝手に他人の情報を漏洩するような人たちを生んでしまいます。そうしたことが起こらないように、子どもの頃からデジタルに慣れ親しむと共に、どう使うかを学んでおくことが重要なのです。新学習指導要領では、このようなことを「情報活用能力」と位置づけて子どもたちに育成することを求めています。これを育成するにあたって、小学生のうちから、コンピュータを使ってプログラミングを体験しながら、プログラミング的思考を育成するとして必修化したのが小学校プログラミング教育です。

 ―コンピュータを使わない、アンプラグドを活用した指導だけではダメということですね。
 はい。例えば、高学年でコンピュータを使用したプログラミング教育を行うことを前提としながら、低学年ではコンピュータを用いずに「プログラミング的思考」を体験するような学習活動を行うことは考えられますが、新学習指導要領では「プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につける」と明記されている通り、ここはポイントとして強調しておきたい点です。
 プログラミングに関しては、先生方も学んできたことではないので敷居が高いと思いがちですが、実際に授業で使われているのはScratchのような直感的に操作できるツールです。体験することを重視して設計されており、プロが使うようなものではありません。とはいえ、口でいくら説明しても理解するのは難しいので、基本的な操作の仕方を分かりやすく紹介した研修用の映像教材をYouTubeで公開(※1)しています。
 また、授業でどう使うのかについては「未来の学びコンソ―シアム」ホームページ(※2)で、学習指導要領に例示した単元等はもちろんのこと、教育課程内で活用できる指導案を紹介していますので、積極的に活用していただきたいと思います。

社会とリンクする取り組みを重視
 ―こうしたなか、「未来の学び プログラミング教育推進月間」(以下みらプロ)では、A分類の中の「総合的な学習の時間」(以下総合)で扱うことを重視していますね。
 「小学校プログラミング教育の手引」の第一版では、A分類となる算数や理科などの単元で実施する指導例を中心に提示。続く第二版では、教育課程内で教科等とは別に実施するC分類の指導例を充実させていますが、「みらプロ」では、企業の最先端の取り組みを知り、プログラミング体験で理解を深め、子どもたちが各自の課題に探究的に取り組める活動を支援するため、協力企業と共に作成した総合の指導案(約35時間分)を用意しています。
 では、なぜ総合で扱うことが重要なのかといえば、我々がコンピュータについて学んだり活用したりするのは、何らかの問題を解決するためです。深夜にネットで注文して翌日届くようになったのも、生活を便利にするためにコンピュータを活用したから実現できたことです。そう考えると、我々の社会がいかに情報通信技術によって便利になっているかを学び、そして、情報通信技術を自分たちが活用して何ができるのかを考えることは、まさに総合のねらいにも当てはまるからです。
 なお、現在、協力企業が企業訪問、講師派遣、教材提供の3パターンで総合の一部をサポートする取り組みとして、約800小学校が実践を進めています。いずれ、この中から出た優れた事例も紹介していきたいと考えています。このように、当初は「何をどうやっていいか分からない」という先生方も多かったと思いますが、今はプログラミング教育を始めるために役立つ情報がたくさん公開されています。まだプログラミング教材を使ったことがないという先生には、ぜひこれらを参考にしながら体験してもらい、プログラミング教育の授業づくりに活かしてほしいですね。

 (※1)文科省・小学校プログラミング教育に関する研修教材(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1416408.htm
 ビジュアル型プログラム言語の基本的な操作を手順ごとに説明した映像とテキスト教材を公開。教員研修や個人で活用できる

 (※2)小学校を中心としたプログラミング教育ポータル(https://miraino-manabi.jp/
 官民協働の「未来の学びコンソ―シアム」のホームページではプログラミング教育の具体的な指導事例等を掲載している

中川 哲(なかがわ さとし)初等中等教育局視学委員
 (併)学びの先端技術活用推進室参与、(併)プログラミング教育戦略マネージャー、「未来の学びコンソーシアム」プロジェクト推進本部本部長代理

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